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やがてお目当てのページを見つけられたらしく、光の速さでディアンに見せる。
細い指で文中の真ん中あたりを指し、見てみれば大文字から始まる単語が書かれている。
エイ語で大文字から書かれるといったら、人名や地名や国名などの固有名詞であるが…。
「これ！男の子の名前だと思うんだけど、発音が分からないの」
「えっと…」
さして長い名前ではなくむしろ短い名前であったので、ディアンはすぐに答えてくれた。
「……ヘンリー。姉さん、男の子の名前はヘンリーだよ」
「ヘンリー…」
「そうだよ。僕の学校にも何人か同じ名前の人がいるけど、家の主とか、支配者とかを意味する名前だね」
どこの誰から教わったか忘れた情報も付け足しておくと、Aはみるみるうちにとびきりの笑顔になった。
「ヘンリー、素晴らしい立派な名前だわ！この男の子にぴったりだし、他に合う名前がないくらいよ！」
さすがにそれは言い過ぎかもしれないが、Aは自信をもってはっきりと断言した。
あまりの褒めようにディアンも目を丸くしたが、Aの無邪気な姿に苦笑いで返す。
Aは発音の知れた登場人物に代わって本を愛おしく撫で、ディアンはただその光景を眺めていたが、今度は彼が顔をはっとさせる。
「あ……姉さん、そろそろ宿題をしないといけないから、今日はここまでね」
「ええっ、もう？」
「ごめんね、さっきも言った通りもうすぐテストだし…」
気まずそうに理由を言うと、Aはルイスの時と同様頬を膨らませる。
だが理由もちゃんとしたものであったし、彼女が見たことのない「宿題」なるものはディアンが苦戦するほど難しいものなのだろう。
渋々了承し、またお話してねと約束を取り付けてから別れた。
ディアンは部屋を出てすぐにある大きな古時計を見る。
針はぴったり午後4時を指しており、丁度Aの部屋に入ってから1時間経過していた。
それを確認するなりディアンはほっと胸をなでおろし、急いで自室に戻っていった。
Aの部屋に入っていて良いのは1時間までと、ルイスからきつく言われていたからだ。
まるで刑務所の犯罪者と面会するような制度で、これでは普通の人なら気がおかしくなる。
しかし、Aはそんな制度が設けられていることなど露知らず、次にお話できるのはいつだろうかと胸を躍らせていた。
生まれてからずっとこうであったから、それが普通だったから。
もはや誰がおかしいのかも分からない。
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白梅 和平(プロフ) - ccさん» コメントありがとうございます！第3章は特に内容が複雑なため書くのに苦労しているのですが、ちゃんと伝わっていると分かり安心しました。久々のコメントで嬉しかったです。更新頑張ります！ (2018年4月8日 14時) (
レス) id: 4fe8a6b6f6 (このIDを非表示/違反報告)
cc(プロフ) - 情景描写が繊細で、独特な世界観にすぐ引き込まれてしまいました。もっと評価されるべき作品だと思います。続き、楽しみにしています！ (2018年4月7日 10時) (レス) id: 3524d9e2e8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：白梅 和平 | 作成日時：2017年7月4日 21時
