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再び回路を繋ぎ合わせようと電線同士を結ばせていると、視界から入った情報が結論を出した。
【ここから見える範囲では確認できず。屋内かどこかにいる可能性が高い】
予想通りの結論でヘンリーはため息をついた。
どうする、1つ1つの家を回っていては手間がかかる。
かと言ってこのまま何もできずにいるのは不味い。
どうしたものかと目を伏せていると、修復された回路が新たな提案をした。
【この街にいない可能性が挙がる】
なんと――いや、Aのことだ。
一体何があって出ていったかは理解不能だが、行く宛てもなく走っていった場合もありえる。
宿もこの街の端の方にあったし、そうであってもおかしくはない。
そうなると、ヘンリーのすることは1つだ。
目線を建物や道ではなく真逆の街外れへ、小指の爪まで見えるほどズームしていく。
少しずつ横にずらしながら条件とともに探索していく。
街外れは全くと言って良い、人どころか野良猫1匹たりともおらず、どろどろになった土が一面に広がっている。
もしも誰かいるならすぐに分かるはずだが…。
半ば諦めていると、ヘンリーはあるものを発見する。
雨が落ちる度に全て飲み込んでいくその土に、小さな窪みがあった。
少しずつ水分で形が崩れてはいるが、つい先ほどできたものだと分かる。
窪みの大きさは150センチにもならない。
Aの身長と一致していた。
その途端、ヘンリーはすぐに壁から飛び降り、すぐ脇にあった建物の屋根へ着地した。
続いてその隣の屋根へ、また隣の屋根へと凄まじい速さで飛び移っていく。
雨で滑ることなど彼にはありえない、ましてや立ち止まることもない。
ただまっすぐ…あの街外れへと向かう。
5分も経たないうちにヘンリーは街外れの荒野らしき所に着いた。
ここでまたAを探索していくも、残念ながら霧が邪魔して見つからない。
ヘンリーは壁の上から発見した窪みまで歩み寄り、すっとしゃがみこんだ。
よく観察してみる。
雨により匂いはかき消されてしまっている、髪の毛1本でも見つかれば確信を持てるのだが。
そう考えつつ、周辺の地面へ目を凝らしていく。
その時だった。
「ひっ」
ヒュッと風が切れるともに、カチャリと金属が擦れる嫌な音がする。
ヘンリーが刀を抜いたのだ。
木ででできた杖の檻から解かれた刀身は、この空模様をそのまま映し出し灰色に、それでいて淡く輝く。
その切っ先を…霧の中からじっとこちらを見てきた老人に向ける。
今、2人の碧眼が繋がった。
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白梅 和平(プロフ) - ccさん» コメントありがとうございます!第3章は特に内容が複雑なため書くのに苦労しているのですが、ちゃんと伝わっていると分かり安心しました。久々のコメントで嬉しかったです。更新頑張ります! (2018年4月8日 14時) (レス) id: 4fe8a6b6f6 (このIDを非表示/違反報告)
cc(プロフ) - 情景描写が繊細で、独特な世界観にすぐ引き込まれてしまいました。もっと評価されるべき作品だと思います。続き、楽しみにしています! (2018年4月7日 10時) (レス) id: 3524d9e2e8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白梅 和平 | 作成日時:2017年7月4日 21時