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その時、軽快だがどこか間抜けたクラクションの音が、辺り一面に鳴り響いた。
勿論この音はAたちにも聞こえていて、始めは孤児らの乗っていた軍車のものかと思った。
だがそうではない。
やがて聞き覚えのある子供の声も混じり、それは騒がしく我々のもとへやって来る。
皆が注目する先には、おんぼろの大型車がこちらに近づいてきていた。
錆びた赤土色をして、先に付いている2つのライトは後から付け足したらしい。
若干取れかかっており、肝心な道を照らさずに斜め前のAたちを照らしている。
ナンバープレートは無理矢理剥がされたのか見当たらず、黒い排気ガスを撒き散らしている。
そして何より、運転席には宿主のアイザックが。
その後ろの荷台には、大勢の孤児院の子らが乗っていた。
彼らはAたちを見つけるなり、まるで魔王と戦い勝ってみせた勇者を称えるかのように、割れんばかりの拍手を送った。
「よくやった！」「ありがとう」「さすがAとヘンリー！」
そして車が止まると、アイザックが脂肪の詰まった腹を揺らしながら急いで降りてきた。
「無事か！みんな無事か！？」
薄い髪を乱しながら尋ねるその姿は、本気で姉弟とナンシーたちを心配しているらしい。
1番手前にいた男の子の肩をバシバシと叩くなり、安堵の溜息を洩らす。
男の子は不機嫌そうだったが。
「ありがとうございます、アイザックさん」
「A、このおじさんは？」
「町の宿屋さん。孤児院の方でみんなの救出を頼んだんだけど…」
Aが目を向けると、アイザックはにっと笑って応えた。
「ああ、井戸の水から川の水まで全部使って、なんとか全員助けられたぞ。……ただ……」
Aとナンシーが喜ぶのも束の間、アイザックは途端に顔をしかめた。
何か言いたげに口を開くも上手い言葉が見つからず、ゆっくりと車を指さす。
見れば、車の助手席に人影があった。
白い髪に、薄いショールを羽織った細い肩。
マルガレーテであった。
「おばあちゃん！」
ナンシーは弾丸のような速さで駆け出し、飛び乗る勢いで車に乗り込んだ。
すぐにマルガレーテに抱きつくが…。
「ッァァァアアアアア！！？」
その瞬間、マルガレーテは黒板を引っ掻いたような悲鳴を上げた。
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白梅 和平(プロフ) - ccさん» コメントありがとうございます！第3章は特に内容が複雑なため書くのに苦労しているのですが、ちゃんと伝わっていると分かり安心しました。久々のコメントで嬉しかったです。更新頑張ります！ (2018年4月8日 14時) (
レス) id: 4fe8a6b6f6 (このIDを非表示/違反報告)
cc(プロフ) - 情景描写が繊細で、独特な世界観にすぐ引き込まれてしまいました。もっと評価されるべき作品だと思います。続き、楽しみにしています！ (2018年4月7日 10時) (レス) id: 3524d9e2e8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：白梅 和平 | 作成日時：2017年7月4日 21時
