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ヘンリーの質問は至って簡潔であり的確である。
その1ミリたりとも動かない目で見つめられては、老人は答えないわけにはいかなかった。
「…ひとまず、名前から答えるとしよう。儂は、チャールズ。チャールズ・リデルだ。医者をやっていたが、息子が継がないとなって出て行き、妻に先立たれた。死にそびれの爺さ」
老人ことチャールズの名を、ヘンリーは聞いたことがない。
頭に組み込まれた機器にもそんな言葉はなかったし、Aからも、その父親のルイスからも聞いたことがなかった。
――いや、知らされていなかったのか。
【息子のルイスについて聞きたい。】
「昔から不愛想なやつだった、儂に似てな。ろくに友人もつくらず、ひたすら…よく分からん物を作っていたよ。周りから気味悪がられていたが、幸い容姿は良くてな。ヴィクトリアと言う貴族の娘に気に入られて、この家を出て行ってしまった」
ヴィクトリアと言う名前にヘンリーは反応した。
Aの母親の名であり、ヘンリーの機体を覆う皮膚の元の持ち主である。
「一度、子供ができたからと顔を見せに来たな。男の子だった。ヴィクトリアとそっくりだったが目だけは……これまたお前と同じ。綺麗な蒼い目だったよ」
…Aの弟、ディアンのことである。
【貴方が助けたその少女は、貴方の孫娘だ。】
紙にそう書いてみせれば、たちまちチャールズの顔色が変わる…かと思ったが、カサカサに乾いたしわだらけの顔はさほど変化しなかった。
代わりと言っては何だが、睫毛の数本残った瞼を少し下ろし、ふうと深いため息を吐く。
髭の先が頼りなくなびいた。
そうしてなるほどと納得したかのように顔を上げ、眠っているAの方に首を向けた。
「そうか、ふむ。道理で似ているわけよ、ヴィクトリアとディアンに。
あの子が雨の中倒れているのを見つけた時、儂は目を疑った。あなや、ヴィクトリアが倒れているではないかと」
チャールズがAを救ってくれたのが不幸中の幸いだった。
でなければ、Aの発見が遅れてしまい、下手をすれば命だって落としかねなかったのだ。
感謝の意を示そうとヘンリーが頭を下げようとした時、チャールズが振り返った。
「して、ヘンリーよ、こちらからも訊きたいことがある。あの子とお前についてだ」
ああ、やはり訊かれてしまったか。
内心ヘンリーは厄介そうに舌打ちをする。
【何せ私は喋れない。こうして紙に書けば時間がかかるが？】
「構わん。儂は知りたいのだ、全てを」
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白梅 和平(プロフ) - ccさん» コメントありがとうございます！第3章は特に内容が複雑なため書くのに苦労しているのですが、ちゃんと伝わっていると分かり安心しました。久々のコメントで嬉しかったです。更新頑張ります！ (2018年4月8日 14時) (
レス) id: 4fe8a6b6f6 (このIDを非表示/違反報告)
cc(プロフ) - 情景描写が繊細で、独特な世界観にすぐ引き込まれてしまいました。もっと評価されるべき作品だと思います。続き、楽しみにしています！ (2018年4月7日 10時) (レス) id: 3524d9e2e8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：白梅 和平 | 作成日時：2017年7月4日 21時
