【コナン】⑤寝て起きたら前世の記憶思い出した。【男主】 (ページ46)

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246. [番外編] ページ46

それから間もなく、具体的な約束を全て取り付け終えたジンは『Aを迎えに行く』と言って車を降りた。

鍵を閉めるからと言って、私とバーボンも容赦なく外へと追い出される。

「駅のターミナルに僕の車があるから、そこまで着いてきてくださったら家までお送りしますよ」

そんなバーボンの言葉に甘えることにした私は今、彼の隣をトコトコと歩きながらAのことを考えていた。

A。

可哀想なペットだと思っていた彼は、実際には飼い主様に愛されている幸せなペットだった。

噂で耳にしたように、酷い暴力や暴行を受けている様子はなかった。

ジンに対して必要以上に怯えているような気配も感じなかったし、やはり私のA救出作戦は、失敗して良かったと思う。

レストランで何故Aが私に着いてくることを選んだのかは知らないが、もしかすると彼は私の強引さに断りきれなかっただけなのかもしれない。

あるいは…最初から私は、彼らに騙されていたのかも。

私にAを拐わせておいて、後から取り戻しに来たジンが、慰謝料として金を請求する計画。

初めから彼らはそういう計画で動いていたのではないだろうか。

そういえばさっきバーボンは『当初の予定だった百億』と言った。

私はてっきり『吹っかけた百億の慰謝料』のことかとおもっていたけれど、本当は『計画していた百億』のことを言っていたと捉えることもできる。

そうだ、きっとそうなのだ。
隣を歩くバーボンに尋ねたところで真実を教えてはくれないのだろうけれど、私はそうであればいいと思った。

だってそれなら、Aとジンに関する嫌な噂は全部嘘で、本当のジンはAを信頼して任務の一端を任せた素敵な飼い主だったということになる。

そのジンの信頼に応えて、完璧に役目を果たしたAは、立派なペットだ。

後に残されるのは、そんな二人にまんまと騙されて踊らされた、馬鹿でまぬけな私だけ。

だけどその私ですら、今こうして幸せの尻尾を掴もうとしているのだから、世の中捨てたものじゃないと思う。

私の中で、今日この日の記憶は、いつか美しい思い出となるのだろう。

普通の生活を送ると決めた以上は、きっともう彼らとは二度と会うことができないのだろうけれど、Aとジンが、今後幸せな人生を送っているといい。

誰よりもお似合いの二人が、幸せに結ばれますように。