【コナン】寝て起きたら前世の記憶思い出した。【男主】 (ページ39)

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[-景光’s side-]

「ただいまー」

「おかえり兄さん、ご飯できてるぞ」

最近俺の兄さんは帰りが遅い。
大学卒業が間近に迫ってきたこの時期だから、卒論や就職準備などに忙しく追われているのだろう。

兄さんと一緒に過ごせる時間が短くなってしまったのは寂しいが、仕方の無いことだ。

それでも夕飯を外では済ませずに家で俺と食べようとしてくれることや、帰りが遅くて夕食準備ができない代わりに…と毎朝朝食を作ってくれるようになったのは嬉しいことだった。

「おー、今日は鶏の照り焼きか！」

「そうだよ、この間大学の帰りに兄さんが鶏肉買ってきてくれただろ？せっかくだから兄さんの好きな照り焼きにしてみたんだ｣

嬉しそうに顔をほころばせて手を合わせる兄さんに、俺の顔にも自然と笑みが溢れる。

「んじゃ、いただきます」

「どうぞめしあがれ」

さっそく照り焼きに手を伸ばした兄さんは、ひとつ摘んで口に運ぶと美味いな、と満足気に呟いた。

「上手に焼けてるみたいでよかった」

「ん、美味しいぞ。
景光は何に対しても努力家だから、料理の腕もどんどん上がるな」

兄さんはよく人を褒める。

『俺は褒められて伸びるタイプだからな、他人のことも上手く褒めて自信を持たせてやれる人間になりたいんだ』

というのが兄さんの信条らしい。

だから兄さんが褒めるのは何も俺だけに限られたことじゃない。

だけどそれでも、こうして二人きりとなった空間で惜しみなく与えられる兄さんからの賞賛が俺にとっての何よりの活力源だった。

俺にはゼロと呼んでいる幼なじみがいる。

彼とは小さい頃に知り合ってからずっと仲良くしているから、それこそもう兄さんと同じくらい長い付き合いになる。

そんなゼロは昔から勉強でも運動でも、いつも俺より少し上にいた。

小さかった頃の俺はまだ負けず嫌いだったから、なんとかしてゼロに勝とうと様々な努力を重ねた。

でも、頑張っても頑張っても俺にはゼロの背中しか見えなくて、それが辛くて、俺は幼いながらに何度も挫けそうになった。

誰にも負けないくらいの努力をしたはずだった。
それでもどうしても、どれだけ頑張っても、俺はゼロには勝てなかった。

ゼロだって別に、努力していなかった訳じゃない。彼が陰でものすごい努力を積み重ねていることを、俺は知っていた。

だからこそ、俺もゼロみたいに頑張ればいつかは彼に勝てるはずだと思っていたのだ。