可惜夜【すずめの戸締まり】

27.鈴芽side ページ29

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草太さんは整った顔を歪(ゆが)めて、要石になってしまったAさんをじっと見つめている。









どうしてこうなったのか分からないけど、Aさんは、草太さんの代わりに要石に⋯









草太さんの目には涙が溜まっていて、私も胸を締め付けられた。








大切な人を失う悲しみは計り知れない。小さい頃にお母さんを亡くしたから、私もその気持ちを知っている。








ダイジンを睨むと「いよいよだねぇ！」とわくわくした声で、これから壊れようとする街を見下ろしている。










もう、いやだ─────











私には、見えてしまう。どうなるのか、想像ができてしまう。









呼吸が苦しくなって、全身が震える。










草太さんの方が、ずっとずっと辛いのに⋯










「もうやだよ⋯っ」









心がぐちゃぐちゃになっている。








草太さんが元に戻って、私はほっとして⋯でも、Aさんが要石になって───草太さんは目の前で苦しそうな顔をしていて、上手く呼吸できてない。








草太さんに、何も声を掛けられない。










ミミズは速度をあげて、私たちのことなんてお構い無しに落ちていく。











風を切って、街が近くに見えてくる。











私は草太さんの横で、ただ、強く目を瞑った。











その時──────











涙で目を濡らした草太さんが意を決したのか立ち上がって、石像を高く持ち上げた。











草太さんはゆっくりと目を瞑って─────振り上げた。












その瞬間──────眩しくて目が開けていられない程の、青い閃光(せんこう)が私たちを覆う。













ミミズは地面に吸い込まれるように消えて─────虹色にきらめく雨が降った。












足場を失った瞬間、風をきって落ちていく。











意識が、遠のいていく。












何かに包まれる感覚がして─────大きな衝撃音が頭に響いて、私は気を失った。










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28.鈴芽side→←26.草太side ※ここから先、原作とは全く違う展開になります。ご承知おきください。

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