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ミミズの上に乗ると、すごい勢いで上昇していった。
空高く昇ると、遠くに見えたのは─────さっき草太の部屋で見た、こども椅子。
⋯あれは草太だ。
走って草太のところへ行きたいけど、ミミズの上は不安定で、思うように動けない。
でも、早く行かないと⋯─────
「─────!」
無理をして足を踏み込むと、足元が溶けるように抜けて、体は宙を舞う。
強く目を瞑ると、包み込まれる感覚があって、再びミミズの上に着地した。
目を開けると──────大きくて真っ黒な猫。
「──────⋯あなたは、要石」
「サダイジン」
この黒猫は、東の要石⋯
サダイジンは、そのまま口を開く。
「ミミズの尾を抑えていた西の要石を抜かれて、半分自由になってしまった強い力に負け、抜けてしまった」
「⋯」
「西の要石は役目を投げ出し、あの椅子の姿に変えられた者に、要石の役割を移した」
「──────つまり、今の要石は⋯草太なの?」
サダイジンは黄色い目をゆっくりと瞬きさせて、無言の肯定をした。
「⋯草太に移ってしまった要石の役割は、また別の人に移せるの?」
「⋯」
サダイジンの黄色い目が、太陽に反射して光る。
⋯私が、草太についていってれば。
いつも優しい草太に甘えて。
こんなことになるなんて──────草太、ごめん、ごめんなさい。
「──────草太⋯!」
草太の名前を呼ぶと、草太は私に気付いて、
「──────Aっ!?」
私の名前を呼びながら、駆け寄ってくる。
「⋯A、なぜ!!」
「草太ごめん、草太⋯」
椅子に腕を絡めて、椅子に掘られた顔のところに、自分のおでこをくっつける。
あたたかい。─────草太の体温だ。
「草太⋯こんなことになって、私のせいで⋯っ」
「泣かないでくれ⋯俺、Aのこと泣かすなんて─────」
─────その時聞こえた、鈴芽さんの悲鳴。
鈴芽さんも飛び降りて、ミミズの上に着地したんだ。
「鈴芽さんが!草太、助けにいかないと」
「わかってる」
草太は椅子の姿で、鈴芽さんの元へ駆けていく。
草太の背中を、ただ見つめる。
──────ありがとう、草太。
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しろりん(プロフ) - って事かな?すごく気になる!(芹澤くんも夢主ちゃんの事…好きなのかな?)夢主ちゃんが助かりますように…更新頑張ってください!(。>ㅅ<)✩⡱ (4月22日 14時) (レス) id: 2a6843f9ca (このIDを非表示/違反報告)
しろりん(プロフ) - 最高です…!草太くんが早い段階で人間に戻って鈴芽ちゃんと一緒に夢主ちゃんを救う為に中盤以降も旅をする』って、パターンは初めて読みました…!と、いうことは草太くんもこれから、お爺さまに会いにいったり芹澤くんとの絡みも増える… (4月22日 14時) (レス) id: 2a6843f9ca (このIDを非表示/違反報告)
ムスメ3(プロフ) - 待ってました!!!!ご自愛してね (6月19日 0時) (レス) @page31 id: fcb0ec653e (このIDを非表示/違反報告)
ネコ型ロボットだけど人っす(( - いや〜、主人公ちゃんが要石になってしまった…、こんなストーリーもいいもんですね!作者さんすげぇ、自分はこんな凄いの書けませんよ、そもそも思いつきすらしませんww私は書くよりも見る派なので!(?)これからも頑張ってください!応援してます! (2023年4月4日 16時) (レス) @page31 id: 3d37e04deb (このIDを非表示/違反報告)
RENA(プロフ) - すきです!!更新されるのを楽しみにしてます.がんばってください! (2023年2月5日 23時) (レス) @page31 id: a8ec99ccfe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:萌娜 | 作成日時:2022年11月27日 21時