10.鈴芽side ページ12
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「九州にあった要石は、今猫の姿で逃げているだろう?」
「あ、うん」
「もうひとつの要石は─────東京にあるんだ」
また草太さんに促されてページをめくる。
「俺が知りたいのは、その具体的な場所なんだ。要石は今、東京のどこにあるのか⋯覚えている限りでは、どこにも書かれておらず、誰も教えてくれなかった。でも⋯ここにある本のどこかに、その記述があるのかもしれない」
その記述とやらは昔の崩し字で、私にはぜんっぜん読めないけど、草太さんはすらすら読んでいく。
「東京の要石がある場所には、巨大な後ろ戸もあるという。100年前に一度開き、関東一帯に大きな災害を起こし、当時の閉じ師によって閉められたという、東京の後ろ戸」
100年前⋯って、教科書で見た事がある。
関東大震災⋯この、ミミズのせいだったなんて。
「もしかしたら────ダイジンはその扉を再び開けようとしているのかもしれない。だとしたら───先回りして、それを防がなければ⋯」
このビルだらけの大きな街に、古びた石像とか石碑とかがひっそりあるなんて、私は上手く想像できなかった。
「────ダメだ。日記にそれらしい記述はあるが、肝心な箇所が黒塗りになってる⋯」
確かに、ページの何ヶ所かが、黒い墨で塗り潰されている。
「Aなら、何か聞いたりしてるのかな⋯いやでも、こんな姿で会うわけにもいかないし⋯」
草太さんは、ぼそぼそひとりごとを呟きながら考え込んでいる。
「───じいちゃんに
「え?」
「この日記は、じいちゃんの師匠が書いたんだ」
「おじいさん?」
「⋯あぁ────俺と、Aの育ての親だよ。近くに入院してるんだ」
さらっと草太さんは話す。
育ての親⋯Aさんは、草太さんの家族?
草太さんは、再び本に目を落として、独り言のように、呟いた。
「失望させたくなかったな⋯こんな姿で⋯」
草太さんの背中は、疲れ果てたように見えた。
椅子だから、見えただけ⋯なんだけど。
その時──────突然激しくドアが叩かれた。
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しろりん(プロフ) - って事かな?すごく気になる!(芹澤くんも夢主ちゃんの事…好きなのかな?)夢主ちゃんが助かりますように…更新頑張ってください!(。>ㅅ<)✩⡱ (4月22日 14時) (レス) id: 2a6843f9ca (このIDを非表示/違反報告)
しろりん(プロフ) - 最高です…!草太くんが早い段階で人間に戻って鈴芽ちゃんと一緒に夢主ちゃんを救う為に中盤以降も旅をする』って、パターンは初めて読みました…!と、いうことは草太くんもこれから、お爺さまに会いにいったり芹澤くんとの絡みも増える… (4月22日 14時) (レス) id: 2a6843f9ca (このIDを非表示/違反報告)
ムスメ3(プロフ) - 待ってました!!!!ご自愛してね (6月19日 0時) (レス) @page31 id: fcb0ec653e (このIDを非表示/違反報告)
ネコ型ロボットだけど人っす(( - いや〜、主人公ちゃんが要石になってしまった…、こんなストーリーもいいもんですね!作者さんすげぇ、自分はこんな凄いの書けませんよ、そもそも思いつきすらしませんww私は書くよりも見る派なので!(?)これからも頑張ってください!応援してます! (2023年4月4日 16時) (レス) @page31 id: 3d37e04deb (このIDを非表示/違反報告)
RENA(プロフ) - すきです!!更新されるのを楽しみにしてます.がんばってください! (2023年2月5日 23時) (レス) @page31 id: a8ec99ccfe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:萌娜 | 作成日時:2022年11月27日 21時