【小説】十人十色に咲け、十色咲学園。ｰ1stｰ (ページ3)

今日:10 hit、昨日:1 hit、合計:14,913 hit

第2話　【遊間陽菜】ページ3

.

朝の太陽の光が当たる、中庭のベンチに座っていると、いつもと同じような声が聞こえた。

「あぁっははぁ！！――――――…」

「…あ、またやってる」

その声が聞こえた方を見ると、南さんが神無月さんを引きずって校内に入るところだった。

朝から元気満タンだ…！

そう思った私は自分の頬をペチッと叩いた。

「よし、今日も頑張るぞーっ！」

と立ち上がろうとした瞬間、

視界がフッと暗くなる。

約30秒後、目隠しされたと気付き、

「だーれーだっ」

この声は…！

「日鷹！」

「せいか～い」

数学担当教師、藤堂日鷹だった。

日鷹は兄さんの親友で、昔から仲が良かった。

まぁ兄さんが死んでから遊ぶことは少なくなったけど…。

と考えている内に、日鷹の手が離れ、光が戻ってきた。

「おはよー日鷹」

「はよーっす」

日鷹はベンチにドスッと座った。

「どうしたの？遅刻するよ？」

「んや…ちょっとこうしてたくてな」

そこで気付く。

日鷹がいつもは見せない真剣な表情で、澄みきった空を見上げていることに。

そうか…今日は…。

私は無言で日鷹の隣に腰かけた。

「…ごめんな」

それは、兄さんに向かって言っているのか。

それとも私に向けて言っているのか。

「日鷹」

私は立ち上がり、日鷹の正面に立つと、日鷹の頬をグニーッと引っ張った。

「そんな顔、兄さんは見たくないと思うよ。兄さんは日鷹が笑った方が喜ぶと思うね」

毎年、この日は日鷹のテンションは低い。

そりゃそうだよね。

自分のせいで親友が死んだと思ってるんだもん。

バカな日鷹だ。

すると日鷹は私の手を離し、髪をくしゃくしゃとして、苦笑した。

「…お前は…あいつに本当、似てるよな…。自分をちゃんと持ってて、芯が強いところ」

「でしょ。あともう一つあるよ」

―――――――――――…日鷹を大切と思う気持ち。

兄さんも私も、日鷹を家族だと思ってる。

だから、家族には笑っててほしいな。

「ハハッ。俺はお前たち兄妹に救われてばっかだ」

日鷹はスッキリしたのか、立ちあがって伸びをした。

「いざとなれば日鷹が救ってくれるよね！」

「おう！任せろ！」

私も日鷹も、空にいる兄さんに笑顔を向けた。