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その後、太宰の異能により人間に戻った敦は、そのまま気を失い、太宰の肩に倒れ込んだ。
「⋯⋯男と抱き合う趣味はない」
『うわあ⋯⋯』
天使は敦を地面に捨てた太宰を少し引いたような顔で見つめ続ける。
だが、倉庫の入り口から「太宰!」という声が聞こえたのでそちらを向いた。
国木田である。
「ああ、遅かったね。虎は捕まえたよ」
そう言って太宰は敦を指差す。
「その小僧⋯⋯じゃあそいつが」
「うん。虎の能力者だ。変身している間の記憶がなかったんだね」
「全く⋯⋯次から事前に説明しろ。肝が冷えたぞ。おかげで非番の奴らまで駆り出す始末だ。
皆に酒でも奢れ」
国木田のその言葉を合図に、倉庫に三人の人が入ってくる。
彼らは全員、武装探偵社の社員で、異能力者だ。
「なンだ、怪我人はなしかい?つまんないねェ」
与謝野晶子、能力名「君死給勿」
「はっはっは、中々できるようになったじゃないか太宰。まあ僕には及ばないけどね!」
江戸川乱歩、能力名「超推理」
「でもそのヒトどうするんです?自覚はなかったわけでしょ?で、そちらの方はどなたですか?」
宮沢賢治、能力名「雨ニモマケズ」
「どうする太宰?一応区の災害指定猛獣だぞ」
国木田独歩、能力名「独歩吟客」
「うふふ、実はもう決めてある」
太宰治、能力名「人間失格」
太宰は薄く笑いながら床に突っ伏す敦を見た。
その顔を見て、先程敦の言っていた言葉を思い出す。
「こんな奴がどこで野垂れ死んだって、いや、いっそ食われて死んだほうが⋯⋯」
そして目を閉じてからまた開き、淀みなく言った。
「うちの社員にする。あ、もちろん天使君もね」
沈黙。
『は、は⋯⋯はあああああ!?』
「どういうことだ太宰!?虎の異能力者ははともかく、その天使という奴は大丈夫なのか!?」
『そ、そうだよ!僕異能力?とかないから何もできないよ!?』
「否、天使君には異能力がある。私がこの目で見た」
『え、あれは、え、あれ異能力なの!?』
「うん」
太宰は知っている。
天使の「それ」は異能力ではないことを。
だが、太宰はそれを今は異能力であるということにした。
そちらの方が話も進みやすいし、彼の為にもなるからだ。
『え、拒否権は』
「ない」
『嘘でしょ⋯⋯』
「よろしくおねがいしますね!新人さん!」
『無理⋯⋯』
これが事の始まり⋯⋯。
怪奇ひしめくこの街で、変人揃いの探偵社で、これより始まる怪奇譚。
これが先触れ前兆し⋯⋯。
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暁月臨(プロフ) - 凄く面白いです!更新待ってます!! (6月24日 16時) (レス) @page16 id: 59dc159e7e (このIDを非表示/違反報告)
雪ん子(プロフ) - 凄い好きです❗️続き待ってます! (2023年4月26日 17時) (レス) @page16 id: fa924563b5 (このIDを非表示/違反報告)
クラスペディア(プロフ) - 面白かったです!更新待ってます✧*。 (2022年12月22日 13時) (レス) id: d83e92e5af (このIDを非表示/違反報告)
かな(プロフ) - 面白いです✨ (2022年12月20日 5時) (レス) @page14 id: a32747b1ee (このIDを非表示/違反報告)
響輝@お気に入り400人突破ベリサンキュ(プロフ) - 面白かったです。続き楽しみにしてます (2022年11月24日 0時) (レス) id: d6b5ec7764 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:棘屋 | 作成日時:2022年11月21日 7時