ツナマヨ、 ページ4
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私は、幼い頃に父を目の前で亡くした。
いとも簡単に呪霊に殺された。
とても、とても優しい人だった。
母は病気で私を産んで間もなく、亡くなったらしい。
父はいつも言っていた。
「優しくて綺麗で、父さんにはもったいない人だった」、と。
私を産んで亡くなった母。
私を庇って亡くなった父。
もう、私のせいで誰かを失うのは沢山だった。
怖かった。
棘くんまでも、私のせいで失ったらと。
「棘くん……、?」
「しゃけ」
「良かっ、たぁ…、」
彼が目覚めた時、安心からか私はわんわんと泣いた。
そんな様子を見て最初は困惑していた棘くんが、ふいに私を抱き寄せて。
「……ツナマヨ、」
小さく、呟いた。
今だに彼の震えた声を覚えている。
私を見る彼の目はとても優しくて、どこか熱っぽくて。
分かっていた。彼の伝えてくれた言葉の意味を。
気付いていた。自分が押し殺していたはずの気持ちに。
「……ん、ごめん。なんて…?」
だけど、分からないふりをした。
……失う怖さに、怖気づいて。
私のせいで死なせたくない。
私は知っている。彼が自分より他人を優先する人間であることを。
棘くんは優しすぎるから、自分が犠牲になることを厭わない。
そんな彼がとても好きで、
_____嫌いだった。
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「またそんな顔して、何考えてんの?」
「……っ!」
「もー、そんなんじゃ強くなれないよ。いいの?」
ぐんっと距離を詰めてきた五条先生。
はっとして受け身を取ったものの、ねじ伏せられた体に痛みが走る。
「……すみません、」
「A、頑張るのはいいけど、頑張りすぎは良くないんだよ」
「…はい」
「いつまでも過去に囚われてても、いいことないし」
「…すみません、」
「……うん、分かればいーよ。今日はもうやめよう」
「そんなっ、」
「焦らない焦らない。Aはちゃんと強くなってるよ、大丈夫」
おつかれ、と私の頭に手を置いた先生は、私を残して行ってしまった。
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ノω・、) ウゥ・・・ - 面白かったァ(´;ω;`)後日談求む (2023年4月27日 16時) (レス) @page19 id: 6fd33d2e78 (このIDを非表示/違反報告)
花瓶 - この小説一気読みしました!すごくおもしろいです!!もう真夜中に泣いちゃいました、、、(´;ω;`) (2022年3月19日 23時) (レス) @page19 id: 0f43647906 (このIDを非表示/違反報告)
日向(プロフ) - 凛櫻さん» ありがとうございます!素敵だと言っていただけて感無量です!コメント本当にありがとうございました…! (2021年1月23日 22時) (レス) id: 518bab79dd (このIDを非表示/違反報告)
日向(プロフ) - 癒姫さん» わああ泣いてくださったとは…!そう言って頂けてとても嬉しいです!コメントありがとうございました…! (2021年1月23日 22時) (レス) id: 518bab79dd (このIDを非表示/違反報告)
凛櫻 - 完結おめでとうございます!素敵な作品をありがとうございます! (2021年1月23日 14時) (レス) id: c829f486b3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:日向 | 作成日時:2020年12月27日 21時