愛咬【SN】 (ページ2)

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太陽が居なくなって、ミュージックビデオと雑誌用の写真数枚の撮影を兼ねたロケはつつがなくスムーズに終わり、結局何も食べずに帰宅した。

寒すぎないように付けたエアコンの風がゆっくり部屋を流れる。
冷蔵庫からペットボトルの水を2本取りだすと無言で別の手が伸びてきた。
立ったままもアレだし疲れているだろうから、とその手を掴んでソファに導いてあげる。

「おつかれさま」

ペットボトルを1本渡すと、小さな手でキャップを回し一口水を含む。
白い喉がコクンと何度か上下して素早く口を拭う彼は、蓋も閉めずテーブルにペットボトルを置き去りにした。

焦らなくても良いのになぁなんて考えて横目で彼を見ると、膝をくっつけて内股になった足をそわそわさせながら早く早くと急かす様に見つめてくる。

多分、夏出来なかった行為だからこそ、長袖を着る時期になった今だからこそ、したくてたまらなかったのかもしれない。

はいはいと少し呆れ気味にトレーナーの袖を捲り腕を差し出すと、彼の口角がゆっくり上がり、待ち焦がれていたかの様に舌舐めずりをした。

はぁ、と息づく音が静かに聞こえる。

火照った顔で高揚感を漂わせる彼は、可愛いて、こわくて、飢えた獣がやっと餌にありつける時みたいに、気が昂っているのが見て取れた。

「……いただきます」

小さく呟いた後､ぱか、と口を開けて伏し目がちに俺の腕を口元に運ぶ。

食前のスープやサラダを味わう様に、最初はお上品に舐めたり、唇で食んだり、キスを落としたり。
優しい手つきと睫毛が震える様が、見ていられない程艶っぽい。

どうやら彼は前座を大切にするタイプのようだ。
そして好き勝手舐め回した後、涎で濡れた唇を一層大きく開いて力いっぱい

「い"っ!」

齧りついてくるのだ。

俺達2人だけの秘密。
彼なりの愛情表現だ。