【ヘタリア】 日本領土達の学園祭 前夜祭

第四戦　「雨男の恋心」 ページ14

「怖い女やなぁ、自分に惚れた奴を利用するなんてな」


教室から様子を見ていた大和は椅子に座り足を組む桜に向かって言った

彼女は特に気にしていないようにスマホで何やら文字を打っていた


「…なんやねん、謝るやん明日」


関西弁を使い大和に返事を返すがどこか適当だ

大和はため息をつくと桜に近づき


「ホンキで首都を狙うならオマエとも決別やな」


桜のあごを持ちあげ視線を合わせ彼女を睨んだ

彼女も鋭く大和を睨み、手を振り払い立ち上がった

そのまま教室の出入り口まで向かうとそこにアーサーが迎に来ていた


「お前も纏めて負かしたるわ」


長い黒髪を気高く揺らし振り向き言うと、ふんっ、と鼻を鳴らし

アーサーと一緒に教室を後にした





『お前なんか嫌いや』





ある日、桜が藤弥に向かってそう言ったのを聞いた

学園祭準備期間の前、俺が藤弥に喧嘩を吹っ掛ける前

声を聞いた最初はまた藤弥がツンデレでいらんことを言ったんやと思ったけどそうじゃなかった

　桜が藤弥から離れて教室に戻る時に目に入った時のアイツの表情…

　まるで子供が道端で転んだ時に必死に我慢しているような

手をぎゅっと強く握り、唇を噛むように食いしばり、涙が零れないように顔を顰めていた

藤弥にとって桜に「嫌い」と言われるのは本当に辛いものだと改めて自覚した瞬間やった

　桜の真意は分からん、どうして藤弥にあんなことを言ったのかも

那綺をあんな風に捨て駒扱いしたのかも理解が出来ん

けど俺はそれを知るために最後まで残る、そして首都になると決めたんや




「必死だね」


不意に言葉を掛けられ大和は振り向いた

後ろにいたのは梅だった


「あたりまえやん、俺はずっと首都になりたかったんやから」

「首都なんて大変で辛いだけだと思うけどなぁ」


梅は机の上に座って大和に向かってまるで子供相手に話しているように話した

彼はそんな梅の態度が気に入らないように梅を睨んだ


「随分と不服そうだけど私の方が経験積んでんねん

年上の言うことは聞くべきや」


大和の方が目線が上にあるのだか見下されてように思えて居心地が悪く感じる

そして同時に、室町時代、屋敷で初めてあった桜を思い出し

何故か昔の桜と今の梅が重なって見えた

　梅が珍しく素の関西弁を出したからなのか、大和大国の威厳が近代に生き帰ったような

そんな感覚に大和は襲われた


「まあ、どっちが勝とうと私には変わらんのやけど…」


呟きは雨音によって掻き消された

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