涙 ページ11
.
Aの頬に手を添えて親指で涙を拭えば、やめてください、顔を背けようとする。
それをさせないように、グッと両手で顔を掴み、無理やり顔を合わせる。
「ん、なに泣いてんの……っと、泣いてるんじゃなかったっけ?ゴミとってあげるから見せて」
「っあ……」
「(うわぁ………)」
悠仁が居るのなんてお構い無しに、顔を近付ける。
Aは涙で濡れた瞳をギュッと目を瞑るから、目じりに溜まっていた涙が零れ落ちる。
「……目瞑れるなら、ゴミ取れたんだね」
「そ、そうですよ!」
「先輩、大丈夫?」
Aは、少しムキになってうっすら赤く染った顔を強く横に振る。
悠仁の声に、ごめん、大丈夫だよ、とぎこちない笑みを浮かべては、飲み物買ってきます、と立ち上がり部屋を出て行った。
「…」
「…」
悠仁ですら喋らなくなったこの部屋はものすごく静かで少し寒い。
暫く時間がたってから、あのさ、と悠仁が口を開く。
「どうした?」
「……五条先生って、A先輩のこと、好きでしょ」
「っ、やだなぁ、悠仁ぃ、先生…と、生徒だよ?それに僕はAが小さい頃から知ってるんだから」
ないない、なんて乾いた笑い声を上げてチラリと隣の悠仁を見る。
「ぇ…」
苦笑いしてんのか、それとも真顔なのか、どちらかかと思っていた僕の目に映ったのは、特訓最中の、集中した時の真剣な表情の悠仁。
でも、今までのソレと明らかに違ったのは、瞳に怒りの色が揺らめいていたこと。
思わず動揺して、顎から手が離れる。
「あのさ、五条先生のそういうとこ、俺、よくないと思うんだよね」
此方を一瞥して、少し冷たい声音でそう言った悠仁は、学長の呪骸を抱えて、ソファに腰をおろし、テレビの電源を入れて、ビデオを機械に差し込んだ。
「(僕の、こういうところ………?)」
それ以上は語る気は無いとでも言いたげに、映画に夢中になる悠仁。
ソファの裏にもたれかかり、天井を見上げる。
悠仁には、Aが泣いていた理由が、分かったんだろうか。
モヤっとしたその気持ちをしまい込んで、立ち上がり、悠仁の頭を2回ほどポンポン、と叩いてじゃあ僕は1回戻るね、とだけ告げて部屋を出た。
………
ラッキーアイテム
伊地知さんの苦労が目に見える
83人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
雪 - 更新待ってます...! (2020年11月7日 11時) (レス) id: 8ab799c49a (このIDを非表示/違反報告)
ささまめ。(プロフ) - 豆腐さん» あ!ありがとうございます!!すぐに訂正しますね!!! (2019年11月8日 19時) (レス) id: 953be4ace3 (このIDを非表示/違反報告)
豆腐(プロフ) - 優太ではなく憂太ですよ (2019年11月1日 11時) (レス) id: df35f93799 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ささまめ。 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/sakuhi/
作成日時:2019年7月25日 18時