× ページ27
××
初めて会った日だってちゃんと覚えてるの。
高校2年の夏、満員電車で押された私を話したことも無いのに貴方は守ってくれたんだよね。
そのせいで長かった私の髪が貴方の制服のボタンに絡んじゃって、大変な思いをしたのをよく覚えている。
『ご、ごめんなさい！！』
「や、俺こそごめんな、痛かったやろ？」
そう言って解けた私の髪の毛を優しく撫でてくれた。その優しい手が忘れられなくて、貴方に気が付いたら恋をしていたの。
『同い年！？てっきり先輩かと……！』
「Aは童顔やもんなぁ〜。」
『ひっ、名前……！』
ドンピシャで好きな声に自身の名前を呼ばれたことに驚いて、思わず変な声を出してしまった私に、君は楽しそうに笑ってくれたよね。
今考えても相当気持ち悪かったろうに。
『は、花火大会！！？』
「浴衣着てきてな〜、Aの浴衣見たいから。」
『えっ、なにそれズルイ！』
センラも浴衣着て！と大騒ぎしたら、恥ずかしそうに待ち合わせ場所に浴衣で来てくれて、子供みたいに大はしゃぎして写真を撮りまくったりしてみて。
あの時の写真、捨てられずに机の奥にしまってあるの。２人で並んで撮ってもらった写真も一緒に。
「……なぁA、」
『ん〜？』
「俺、Aの事、好きなんよ。」
告白は、貴方から。
公園のベンチで、帰り道に買ったアイスを食べてる途中だった。もう少しムードがある時でもよかったのに！って私はよく怒っていたよね、ごめんね。
『センラ、私もうむりだよ、耐えられない。』
『応援、できない。……ごめ、んね。』
「…………我慢、させてごめんな。」
別れる時ですら、貴方は貴方で。
いつも以上に優しくて、大好きな声は少し震えていて、その手が私の手を掴んでくれる事は無かった。
なにひとつ、忘れられないの。貴方との思い出は。
.
ばかみたい。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 48人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ほさと - とても感動しました。占ツクの歌い手様を扱った作品には珍しくしっかりと小説になっていて、一介の読書好きとしても嬉しかったです。どの作品もとても美しい比喩があり、音読したい作品だなぁと思いました。 (2019年7月14日 20時) (
レス) id: fdc2472f82 (このIDを非表示/違反報告)
弓乃 - 皆様の素晴らしい文章に心が震えました。ありがとうございます。執筆お疲れ様でした。これからも頑張って下さい。 (2019年6月17日 16時) (レス) id: d99258de7b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
