第42話 ページ44
(同時刻 沖田side)
行為を終えてシャワーを浴びた俺は、ホテルのベッドの上に脱ぎ散らした着流しに腕を通していた。
「はァ……どうしたもんかねィ」
あの晩、月の光に照らされ今にも消えてしまいそうなAを見て、
"ッ…どこにも、行かねーでくだせェ”
"ハァッ…ハァ…そーちゃ、"
“頼むからッ…”
“…だいじょーぶだよ、”
"一人にしないでくだせェよッ…"
“大丈夫だから…泣かないで、そーちゃん”
初めて姉上の姿に重ねてしまった。
カタリ……
"ッ……”
薄く開いた襖越しに目が合った土方さん、
"総悟…、A…"
気まずい顔で荒く呼吸する俺を見て、彼はゆっくり俯いた
”万事屋には…とりあえず帰るよう伝えた…”
無垢な感情を止める術もなく、彼女をこの道に引き摺り込み。
不徳の道を行く代償に、多くのモノを失っているような気がする。
沢山の涙と傷の上にある、この不確かなカタチは、一体。
“明日の早番…遅れるなよ…ッ”
痛み以外の何を残すのだろうか。
「ねーえー、沖田さん…」
「あ…?」
「もー…さっきから呼んでるのにずっと上の空…」
随分の間考え込んでいたようで、さっきまで体を重ねていた女が、髪の毛を乾かしながらベッドルームに入って来ていた。
「あー…悪ィ、最近ちいと仕事が忙しくてねェ」
「うっそだぁ、沖田さんが仕事真面目にしてるなんて話聞いたことないもん。ちがう娘のこと考えてたんでしょ」
そう言って笑った彼女は「まあいいけどねー」と、ベッドサイドに置いてあった着物を身に着け始めた。
「おーおー、全部お見通したァ…女ってのは怖いねィ」
「本命にはバレないようにしなよー」
「そんなの居ねーよ」
「それも嘘でしょ」
「これはホントでさァ」
「えー、みんな言ってるよー」
「何がでィ、」
面倒さを隠しもせず、襟元を整えながら投げた短い返事。
「だって、沖田さん絶対にキスしてくれないから、」
返ってきた言葉は思いも掛けないもので、
「きっと本命の子いるよねーって」
一瞬息ができなかった。そんなこと考えたこともなかったから。
「ッ……」
でも、思い浮かぶのは彼女の笑顔。
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あつぽん(プロフ) - 白雪さん» ありがとうございます!そんな風に言っていただけるなんて本当に嬉しいです。励みになります!これからも頑張りますので、どうぞ応援よろしくお願いいたします (2016年8月25日 15時) (レス) id: 3134e8bca3 (このIDを非表示/違反報告)
白雪 - これ面白すぎです (2016年8月23日 20時) (レス) id: 7a9606292a (このIDを非表示/違反報告)
あつぽん(プロフ) - 蒼月さん» ありがとうございます!コメント、本当に嬉しいです。これからも頑張りますので、どうぞ応援よろしくお願いいたします! (2016年7月4日 21時) (レス) id: 3134e8bca3 (このIDを非表示/違反報告)
蒼月(プロフ) - 続き楽しみです!更新頑張って下さい♪ (2016年2月5日 17時) (レス) id: 5defdd12f1 (このIDを非表示/違反報告)
あつぽん(プロフ) - 高杉銀時さん» コメントありがとうございます!楽しみにしていると言っていただけると、すごくテンション上がっちゃいますよー(*^O^*)これからも頑張りますので、どうぞ応援よろしくお願いいたします ! (2016年1月12日 19時) (レス) id: df8f2d9e4c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あつぽん | 作成日時:2016年1月4日 14時