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第29話 ページ31

「ん…、そーちゃん」

名を呼ばれて振り返る。
自分をこうやって呼ぶのはひとりしかいない。

「悪ィなA、起こしちまったか、」

そっと手を握られ、触れた温度がその小さな手から伝わってくる。

「どうした、寝ぼけてんのか」と続けてみると、ふわりと微笑んだ彼女に、


「そーちゃんも、泣きたいの…?」と問われ、すぐに答えられなかった。

「…何言ってんだ、やっぱりお前寝ぼけてんだろ、」

ただ真っ直ぐに見つめられる緋色から目を逸らした。

「……」

「……」


沈黙が続いたあと、
掴まれたままの手をぐいと引き寄せられて、

「だって、あたしだけ先に、泣いちゃったから」

ふたりの距離が近くなった。


「だから、」


ああ俺は、一体どちらに従えばいいの。

「そーちゃん、」

小さな体で力いっぱい抱きしめて、冷たくなった俺に温もりをくれる、お前の胸で。

“そーちゃん”


力なく触れて、冷たくなっていく手で僕を支えてくれた、貴女の胸のうちの。

「ッ…、A、」

姉上、やっぱり俺は、強くなんかない。


「A…ッ、A…」

あなたが赦してくれた僕を、僕は赦すことができない。だから、


「安心して、思いっきり泣いていいよ。だって、」

冷たい俺に、触れるだけの温もりをくれる彼女を、


「あたしは絶対にそーちゃんのこと、」

ずっと手放せないでいる。


「一人にしないから。」


消えることのない痛み。

それをAも理解っている。

理解った上で傍にいることを選んだのだ。

けれどこの痛みがふたりの今を繋ぎとめるものだった。

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あつぽん(プロフ) - 白雪さん» ありがとうございます!そんな風に言っていただけるなんて本当に嬉しいです。励みになります!これからも頑張りますので、どうぞ応援よろしくお願いいたします (2016年8月25日 15時) (レス) id: 3134e8bca3 (このIDを非表示/違反報告)
白雪 - これ面白すぎです (2016年8月23日 20時) (レス) id: 7a9606292a (このIDを非表示/違反報告)
あつぽん(プロフ) - 蒼月さん» ありがとうございます!コメント、本当に嬉しいです。これからも頑張りますので、どうぞ応援よろしくお願いいたします! (2016年7月4日 21時) (レス) id: 3134e8bca3 (このIDを非表示/違反報告)
蒼月(プロフ) - 続き楽しみです!更新頑張って下さい♪ (2016年2月5日 17時) (レス) id: 5defdd12f1 (このIDを非表示/違反報告)
あつぽん(プロフ) - 高杉銀時さん» コメントありがとうございます!楽しみにしていると言っていただけると、すごくテンション上がっちゃいますよー(*^O^*)これからも頑張りますので、どうぞ応援よろしくお願いいたします ! (2016年1月12日 19時) (レス) id: df8f2d9e4c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あつぽん | 作成日時:2016年1月4日 14時

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