不器用な私たち (ページ46)

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46. jiyong ページ46

乱暴に前から車を突っ込んで駐車した。早足でAの病室へ向かう。

嘘だ嘘だ嘘だ。

エレベーターのボタンを押したが、待っていられなくてエスカレーターを駆け上がった。
Aの病室の前に着いた頃には息が切れていた。

ドアを開けると、ベッドの上には目を覚ましたAとテソンが一緒に寝ていた。
二人とも俺がいきなり来たせいでかなり驚いていた。

「…仲良さそうなことで。」
「ヒョン、ノックくらいー…」

テソンの言葉を無視してAの横へ立った。
Aは俺の顔をじっと見た。

Aが俺のことを覚えてないなんて、そんなはずない。絶対ない。

…なんでそんなに怯えた目で俺を見る？

「A、俺のこと分かるでしょ？」

サングラスを外し、Aの目を見た。

「ジヨンさん…ですよね…？」

そう答えたAの目は、ただただ困っているだけで、俺の知ってるAじゃなくて。

はは。
本当に覚えてねえのかよ。

「ヒョン、ちょっと。」

テソンに腕を引かれて、部屋の外へ連れ出された。

「ヒョン！Aにいきなりあんなこと言わないでください！」
「…ごめん。」
「Aは自分が一部記憶喪失になったことをまだ知らないんです。」
「…そっか。」
「先生は、だんだん記憶が戻ってくると思うって言ってましたよ。」
「…お前のことはちゃんと覚えてるわけ？」
「…はい。」
「…ツイてねーな。」

なんで俺のことだけ忘れるんだ。

「ヒョン、待って。」

帰ろうとすると、テソンに引き止められた。

「何？」
「…話がある。」

テソンの真っ直ぐな視線を浴びると、もうどこにも逃げられないような感覚に陥った。

「すぐ終わる？俺、事務所抜けてきたから、早く戻んないと。」
「…じゃあ、また他の日に。」
「…了解。」

長い芸能生活のおかげで、こんな時にしれっと嘘をつけるようになってしまったことに初めて感謝した。