不器用な私たち (ページ33)

今日:16 hit、昨日:2 hit、合計:25,239 hit

33. jiyong ページ33

帰ろうとするAの腕を咄嗟に掴み、引き止めた。

「A…。」
「ジヨン…離して。」

その言葉に余計手に力が入る。今この手を離したら、きっと二度とAは戻ってきてくれない。

「嫌だ。」
「…お願い。」

Aを引き寄せ、抱きしめた。

「Aが好きだ。」

Aは何も言わない。

「Aがいないと、困るんだよ。」

Aがそっと俺の胸を押した。

「…更生施設に行くしかないよ。」

え？

「ひとりで止められないなら、自分の過ちを認めて、誰かの力を借りるしかないよ。もう、私は手伝えない。」
「A、違う、聞いて。」

Aは下を向いたまま、続けた。

「本気でジヨンのこと助けたいと思ってた。今でも思ってる。だけど、だけどもう無理なの。」
「A、俺もう薬なんてやってない。」
「…え？」
「あの時だけだよ。」

Aは困惑した表情を浮かべた。

「うそ…でしょ？」
「本当に。」
「どうしてそんな…」
「ごめん、Aと会うために嘘ついてた。」
「……」
「けど…Aだって俺のこと好きでしょ？」

Aの目から大粒の涙が流れた。

「ジヨン…最低。」

俺の手を思いきり振りほどき、勢いよく家を飛び出した。

追いかけようとドアに手をかけたけど、そのまま手を下ろした。

Aの言う通り、俺のしたことは最低だ。
Aを傷付けた。

俺にAを追いかける資格なんて。

Aの居なくなった部屋が妙に冷たく感じた。
これがいつもの俺の部屋なのに。

どうして俺はこんなやり方しか出来ないんだろう。