不器用な私たち (ページ11)

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11. daesung ページ11

昨日の夜、Aが眠れないで起きているのは知っていた。Aが僕の手を握ったから、僕も握り返した。なんとなくぼんやりとしか覚えていないけど、Aはその後もずっと起きていたんだと思う。

声をかけようか悩んだけれど、やめた。

Aは僕に何か相談したいことがあれば、必ず自分の口から言う。僕から聞かなくても、大丈夫なはずだから。

そう思って、次の日に備えて眠りについた。そしたら起きたらAは居なかった。

ここ最近、たまにこういうことがある。

Aが何かを抱えているのは分かってる。でもAは僕に何も言わないから、僕は自分から聞くのが怖くて聞けなかった。

Aとの付き合いは、僕が想像していた予想をはるかに上回るものだった。自分でも、こんなにAのことを好きになって、大切に思うようになるとは思っていなかった。

Aは最初、ただのファンだったから。

スンリの紹介だった。僕のファンがいるから、会ってくれと。

ファンを恋愛対象に見たことなど一度も無かった。
彼女たちは僕の一部しか知らない。本当の僕のことなんて、分からないから。
僕だって知らない。ファンたちのことを名前すら知らない。
だからこそ、この関係が上手くいく。アーティストとファンの関係はこの距離感のままでいい。

Aに初めて会った時、他のファンたちと何の違いも感じなかった。僕はビッグバンのテソンになって、挨拶をした。

Aも喜んでいて、スンリと３人でそのまま楽しい時間が過ぎた。

店を出ると、スンリは用事があるといってすぐにタクシーに乗って行った。僕も帰ろうとすると、Aが僕を引き止めた。

「テソンさん、今日はありがとうございました。」
「いえ。こちらこそ、楽しかったです。」
「…本当のテソンさんって想像していたのと違って、もっと好きになりました。」
「え…？」
「私、人の内面に惹かれるんです。」

自信満々にそう話すAの目はキラキラしていた。

「今度会う時は、ビッグバンのテソンじゃなくて、ただのカンデソンさんに会いたいです。では、おやすみなさい。」

Aはくしゃっと笑うと、くるりと回って去って行った。