【ハイキュー!!】王様の双子は頭のねじが外れてる。

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幸い、月島が命を落とすことも、大きな怪我をすることもなく。
Aが体中をすりむいたり、脱臼したりしただけで、事は収まった。
電源が切れる様に、Aは眠ってしまったので、しばらく起きることはない。
事の重大さに、改めて気づく。
《Aが壊れてしまった》ということは、こういうことがいつ起こるか分からないことと同じ。
ここには、置いておけない。

「……ねぇ、あの子。何かあったんでしょ。」

保健室で、月島が珍しく、毒気の無い言葉を吐く。
その《何か》は、Aの承諾なく話していい話ではない。
けれども月島をひどい目に遭わせてしまった以上、話せないということもできない。

「黙ってないで何か言ってよ。……あの子、《助けて》って言ったよ？」

月島が、俺を責め立てる。
Aの寝息が、俺を締め付ける。

「……Aはおかしいんだ。……去年からずっと、あの調子なんだよ。」

ある程度までは、月島に知る権利があるだろうから。
《おかしい》の一言に付した。

「もしかしてあの子って、」

月島が俺に何かを言いかけた所で、ドアが開く。
教頭かとも思ったが、予想は大外れ。
神妙な顔をした、キャプテンだった。

　キャプテンからは、《特例中の特例で目を瞑ってやる》と言われたと伝えられた。
Aが《王様》という言葉を聞くと、誰であろうと排除しにかかる、ということは。
しっかり、この学校の大人全部に伝わっていたのだ、と、少々安心する。

「……影山、とりあえず俺と月島には、全部話してくれないか？」

《少なくとも月島には知る権利があるだろう》、と、キャプテンは付け加えた。
それはそうだ。
でも、話したところで。
Aが受け入れられるとは限らない。
俺が壊してしまったと知ったら、月島は何て言う？
Aは俺を守っていると信じていると言ったら、キャプテンは何て言う？

「Aは……、いわゆる二重人格じゃないんですけど。その傾向があるみたいで。」

ああ、だめだ。
そこに至る《過程》は、絶対に喋ってはいけない。
知っているのは、《あの時の北川第一の奴ら》だけで、十分だ。

「……すみません。そこに至るまでの話は……。……Aが克服してからじゃないと。」

誰も納得しないだろう。
俺も、月島も、キャプテンも、それからA本人も。
でも、仕方ないじゃないか。
俺にはどこから喋っていいのか、分からないんだから。

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