【ハイキュー!!】王様の双子は頭のねじが外れてる。

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――――――――――――本当に、《普通じゃないA》は消えてしまったようで。
同時に、《普通じゃないA》に関するAの記憶は、全て消えてしまった。
かかりつけの精神科にも行ったが、驚異的な精神の回復があった、の一点張りであった。
親が先生方に配っていた薬の類も全て回収され、全ては、なかったことになってしまった。
どこか、寂しい様で、でも嬉しかった。
Aが、ようやっと、ちゃんと笑ってくれる、と思うと。
とても、嬉しかった。

「飛雄っ！」

休み時間の度に会うのは変わらないけれど。
でもその、《飛雄》と呼ぶ声は、明らかに熱を帯びておらず。
ただ純粋に、俺を好きでいてくれる、A自身の声だった。

「……いい加減、抱きついて来るのはやめてくれないか。」
「いいじゃん、飛雄の匂い好きなんだもん。制汗剤の匂い。」

スプラッシュマリンの制汗剤は、確かにAの熱烈な勧めで買ったものだ。
《青が似合うから》、という理由だった気もするが。

「だからって……」
「飛雄に彼女が出来たらやめるから。……んふふ、月島君だ！」

ひらひらと、俺の腕に収まったまま、月島に向かって手を振るA。
いつしかAは、月島に、《Aちゃん》と呼ばれるようになっていた。
そして月島は、あの練習試合を境に、

「やあ、《王様》。今日もベストカップルだね。」

Aの前で、意識的に俺を《王様》と呼ぶようになった。

　放課後、練習に向かおうと体育館へ向かって足を進めていると、Aが足を止めた。
どうしたのか、と聞いても、答えなさそうな顔をしているので、

「怖いのか？」

と、聞いてみる。
誰も居ない廊下、Aの視線だけが、俺を貫いている。

「飛雄、よかったね。」

Aから発せられた言葉が、異常なほど重い意味を持っているということを。
誰かが聞いていたとして、わかっただろうか。
《よかったね》。
その言葉は、俺が及川さんと出会った時に送られた言葉。
あの時、Aは―――――――――――――――――――――――――――――――――

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