TO BE WITH YOU (ページ4)

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好きになっちゃったよ、って小さく呟いたAのこめかみあたりに、唇を落とした。

こいつの傍にはいつも当たり前のように松本がいて、どうせ自分のものにならないならと思いを告げることもなく諦めた高校生の頃。

松本が従兄弟で幼馴染で家族だと聞いて、驚きと少しの違和感。

「俺さあ、松本がほかの学校に女がいるって、お前に言ったことあったよね？」
「あー、あったね。なんで和君が怒ってるんだって思ってた」
「あの時、A泣きそうな顔してた」

学校と最寄の駅の間にある公園で偶然松本が他校の制服を着た女とキスをしているのを見た俺は、次の日松本にそのことで詰寄ったけど、お前には関係ないと一蹴されたんだった。

関係あるんだよ、俺はお前の彼女が好きなんだから、とは松本には言わなかった。
だけど関係ないと言い切られたその腹いせに、Aにその事実を告げた。
松本と別れたら、俺にもチャンスが回ってくるんじゃないかって、そんなことを思いながら。

知ってるよ、潤君もてるもん、と言って、Aは泣きそうな顔をしたんだ。

知ってるのに付き合いを続けんのかよって言いそうになったけど、知ってるのに付き合いを続けたいんだってことに気づいて、それ以上話すのをやめたんだった。

「そんな顔してた？」
「うん、切ないような、苦しそうな、そんな感じ」

Aは少し黙って考えた後、俺の顔を見て柔らかく微笑んだ。

「それは、私が和君のことが好きだったからだよ。潤君と私は付き合ってないんだよって否定しても、きっと信じてもらえないと思って。好きな人に好きって言えないのかなって、悲しかったんだ」

そんなこともあったね、って無邪気な顔して懐かしむAを見て、胸が痛む。

でもこのタイミングを逃したら。
また手に入らないまま終わってしまうかもしれない。

「A」
「ん？」

一つ深呼吸してからAの手を握る。
想いが、伝わるように。

「俺、今彼女がいて」
ビクッと逃げようとした手を、捕まえる。

「知ってるよ、さっきから何度も和君の電話鳴ってるもん。そんな気がしてた」
「別れるから、待ってて」

Aの唇が少し尖って、口角が下がる。

あの時とまた、同じ顔。

Aは悲しそうな顔をするだけで、待っててという俺の言葉には返事をしなかった。

俺のことを好きだからそんな顔をさせてるって思っていいのか、わからない。