TO BE WITH YOU (ページ21)

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来年結婚するという友人を冷やかしていたら、適齢期とか、そんな話になった。

繋がれた手を見て、和君にお見合いの話をしてもいいのかなって気になってくる。

「もうすぐ30だもんなー」
「俺はまだ28だから」

吉田は？もう誕生日来た？と向かいに座っている生田君に聞かれ、まだ28だよ、と答えた。
お前は？と生田君が和君に聞くと、和君の向かいに座っている風間君が先に答えた。

「ニノは俺と誕生日一緒なんだぜ。もう先月29になったの。あー結婚してーなー」

びっくりして思わず和君を見たけれど、和君は真顔で真っ直ぐ風間君を見ているだけだった。

こっち見てよ。
誕生日だったなんて、私知らない。

思わず引っ込めようとした私の左手を、和君がぎゅっと握って離してくれなかった。

ねえ、何を考えてるの？

右手でジョッキを掴んでビールを流し込む。
動悸がする。アルコールの熱がぐうっと上がってきて、顔が火照る。

「そう言えばさあ、ニノ、この前一緒に歩いてた彼女とは結婚しないの？」

風間君が和君に枝豆の鞘をビシッと向けて聞いた。

「うるせーよ、風間。結婚とかありえないし」

隣で答えた和君がどんな顔をしているのかはわからない。
聞いたこともないような和君の冷たい声は、もしかして私に向けられている？

この前一緒に歩いてたって、いつ？
私と再会してからの話？
結婚とかありえないの？

変わらず握られた左手が虚しい。
こうでもしておけば、私の機嫌が悪くならないとでも思った？

「二宮君、私お手洗い行くから通してもらえる？」
「あ、ごめん」

ごめんって、何に？

和君がハッとした表情で私を見てからそっと手を離して、自分の椅子を引いて通路を拡げてくれた。

別にトイレに行きたかったわけじゃない。ただ、手を離したかった。和君から離れたかった。

ドア一枚隔てただけなのにトイレは静かだ。
手でも洗おうと蛇口を捻った。
冷たい水が心地よい。
さっき昇った熱が、一気に冷めていく。

馬鹿みたい。
彼女と別れてないって、わかっていたことじゃない。
期待しないようにしていたはずなのに。

鏡に映る自分の酷い顔を見て、一息吐いてからトイレを出たら、背を向けて立っていた男性がこちらを向いた。

どうして、なんて思うのはやっぱりどこかで期待していたからなんだろう。私は馬鹿だ。
後ろ姿でも一目でわかる、これは和君じゃないって。

どうして、ここにいるのは和君じゃないの？

「生田君」

生田君が、私を見て笑った。