TO BE WITH YOU (ページ2)

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まじかよ、とつぶやいた二宮君は、苦虫を潰したような顔を一瞬見せたけど、すぐに笑顔になった。

「従兄弟…」
「うん。家が隣同士でね。潤君は家族だよ」

お開きが近くなって、みんなが帰りの準備を始める。

「二次会、カラオケだって。二宮君とAはどうする？」

カラオケって気分じゃない。大勢の前で歌うのは苦手だし、もうお酒飲めないし。

でも、でも。

「二宮君、どうするの？」
「あのさ、あの時みたいに和君って呼んでよ」
「和君？」
「ん？」

周囲が慌ただしく席を立ちあがる中で、私と和君の間で時間がゆっくり流れだす。

「俺、帰るわ。また今度ね？」

声をかけてくれた友達にそう言うと、和君は立ち上がった。

なーんだ。残念。
もうちょっと一緒にいられないかなって、ざわざわと出口に向かう流れの最後尾でいろいろ考えてみるけど、誘う勇気も理由も持ち合わせていない。

ちらり、と横にいる和君を盗み見ると、何よ？と優しく笑ってくれた。

「何でもないよ」
「そう？」

あの頃みたいに、見ることしかできずに終わるのかな？
また、会えるかな？

お店の出口で、二次会に行く人と帰る人とが別れを惜しんで立ち止まる。

気はのらないけれど、大勢に紛れていればこの寂しさをやり過ごすことができるのかもしれない。

「行くよ」
カラオケ組の輪の端にいた私の右手を、和君の左手が引っ張る。
誰にも知られずに、静かに二人で歩き出して喧騒から離れる。

「和君、えっと、」
「A、カラオケ行きたかった？」
「ううん」
「だよな、そうだと思った。けど」
「けど？」
「どこ行こっか？」

どこ行こっかって、じっと見つめられて恥ずかしくて、思わず目を逸らしたら、私と和君の繋いだ手が目に入った。
高校生の頃、あんなに触れたかった和君に、大人になったらこんなに簡単に触れることができた。

「A？」
「ん？」
「邪魔者がいないなら、始めようか？」

いつもよりお店のネオンや車のライトがキラキラ見えるのは、酔っているからなのかな？

私の手を掴む和君の手がぎゅっと力が入って、私の頬に和君の唇が触れた。

キラキラ見えるのは、きっと、あの頃諦めた想いが動き出したから。
恋が、始まったからだ。