【文スト】大好きな貴方に、手袋を買いに。【男主】

3-1　夏といえば？怪談大会！-百物語- ページ9

「暑くて仕事に熱が入らないよAー」

『もう、仕事に熱が入ってないのはいつもでしょ！』

「冷たいなぁ。A、夏といえば？」

『え、俺だって今忙しいんだけど』

妨害してくる太宰を軽くあしらうも、質問なんてされると返事で誤魔化せないから、仕方なく答える。

「早く早く〜」

これは選択肢を間違えると、今からやろう！ なんて云いだすパターンのやつだ。

出来る限り今出来ないものを考える。

『えー……ん……あっ！ 怪談、とか？』

怖い話を昼やったって怖くないだろう、これなら今からできまい。

「怪談、ねぇ。いいじゃない。今夜探偵社のみんなで怪談大会をやろうじゃないか！」

『げ……そんなの誰も乗らないでしょ……』
「ナオミは賛成ですわ！
ね、兄様もそう思いますよね？」

『ねぇナオミ勝手に乗ってこないで？！』

「う、うん……ナオミがそう云うなら……うん、仕方ないよね」

『潤一郎？！ 絶対怪談嫌いなタイプでしょ！？』

そうやってAは否定し続けたものの、太宰や、他数名の力は強く、事務員を除くほとんどが集まってしまった。

ー ー ー ー ー

そして、全員が仕事を終えた後、再び探偵社に集合した社員達。

『それで、怪談ってどんな感じなの？』

「怖い話を、順番に言っていけばいいの
さ」

「え……僕、そんなもの持ち合わせてないんですけど……というか帰ってもいいですか」

敦は無理やり連れて来られた様だ。
それを乱歩が阻止する。

「駄目に決まってるでしょ。
そうだね、百物語みたいなので良いんじゃないの」

『ひゃくものがたり？』

「本来は、きちんとしたやり方があるんだけどね」

「簡単に言うと、蝋燭を百本用意してね、一人が怪談を語り終えるごとに一つずつ、蝋燭の火を消していくのさ。
百話目を語り終えた時には、本物の物の怪が出るんだってね」

「ひ……っ、や、やめましょうよもう……」

「まだ始まってもないですのに！」

『物の怪……！ ちょっと楽しそう！
敦、大丈夫だよ。俺、怖い話の本用意しておいたし！』

「いや、そういう問題じゃないんだけどね？！」

「読むのはルール的に大丈夫なのか」

「ま、百話終えるのが目的だと思えば大丈夫じゃないの。
何せ、平均一人あたり十話は必要だからね」

国木田の疑問に、太宰は「要は雰囲気でしょ」と返す

「あ、あちらの部屋の蝋燭に火を点けてきますね」

先刻よりも案外乗り気な潤一郎がライターを手を、部屋をあとにした。

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