虎杖処刑回避編 第1章 6 ページ42
宿儺side
__「貴様、結界術師の類か」
男は結界術、主に帳を上手く活用し、俺から攻撃を退け、結界術で上手く攻撃をしていた。
結界術を利用して攻防が出来る奴なんて、今まで見た事が無かった。
戦闘後、恐ろしい事に生き延びた其奴は、名を百衣と改めた。
「たまたま結界術しか使えなかったんですよ。貴方みたいに術式勝確並のチート術式なんて持ってなかった。だから、自分で作ったんです」
結界術しか使えない家系なんぞ、平安時代には落ち溢れだった。
しかし、そんな落ち溢れがなんの変哲も無い結界術で強い呪術師を負かす姿はとても面白いものだった。
__「……人間なんてどうせ死ぬものなのだから、態々見舞いに来なくとも良いのだよ」
ある時を期に、百衣は床で寝る事が多くなった。元々貧弱そうだった体はより貧弱そうに見えた。
もう戦えなくなっていた。
「私は少し病に侵されただけさ。なぁに、心配は要らぬ。そんな心配だったら私が床で作ったお守りをあげるよ」
百衣の手から溢れる様に落ちた、お守りを拾う。
柘榴が咲いた様な鮮やかな色合いだった。
思わず、見惚れてしまう程に。
「その布、良いだろう? 巷では布は呪いから守ってくれるらしいと流行りでな。市場でお前の眼の様な色合いの布を見付けたものだから、買ってしまったよ」
そう言った途端、百衣は床に深く潜った。
「大丈夫か?」と声を掛けても、返って来るのは呻き声のみ。
「宿儺、最期に頼みがあるのだよ。……私の術式を広めないで欲しいんだ。人を守る為の帳術が、今や人里でお手軽に人を傷付ける、道具となっている。私はそれを望んでない。私は精々私が生まれ変わった奴だけに、帳術を使って欲しいのだよ」
途中途中咳き込みながらだった。
中には血混じりもあった。
でも俺はどうしようも無い。
年齢の壁だ。
ただの風邪がこの老い耄れを殺すのだ。
まぁ、この争いの中歳で死ねる此奴も幸せかもしれない。
「ハッ。誰がお前なんぞの術式を広めるか」
「そうか。安心したよ」
お前は毛布から少し顔を出した。
そして、その瞳はゆっくりと閉じていった。
遺体も親族に見付かる前に、俺が回収した。
それも百衣の願いだった。
腕の中でもう息をしない百衣は、いやに軽く、冷たかった。
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陽毬(プロフ) - くささん» どうにかまだ見ぬはっぴぃえんどに帳を利用して書こうとしたらこんなことに……。帳の応用はほんとによく考えたのでそう仰っていただき嬉しいです! コメントありがとうございますm(_ _)m (2022年12月28日 0時) (レス) id: d9289f95ee (このIDを非表示/違反報告)
くさ - 宿儺を祓うんじゃなく疑似ポケ◯ンボールに突っ込むとこ、流石です。めちゃ面白かった〜!! (2022年12月27日 23時) (レス) @page47 id: 56aae56e91 (このIDを非表示/違反報告)
陽毬(プロフ) - Mさん» 最後まで読んでくださりありがとうございますm(_ _)m 長編だったのに読んでいただけるのは本当に嬉しくてたまりません……。面白いと思っていただけて何よりです! (2022年11月13日 23時) (レス) @page47 id: 22cb640d25 (このIDを非表示/違反報告)
M - めっちゃくちゃ面白かったです!!!! (2022年11月13日 23時) (レス) @page47 id: 4b18ae76aa (このIDを非表示/違反報告)
赤の黒犬 - マリオットさん» 随分と長かったのに読んでいただきこちらこそありがとうございますm(_ _)m 自分もこうして書いたり皆様の作品を読むことで凄く呪術廻戦への愛情を感じます。私も呪術廻戦めっっっちゃ大好きです (2022年8月25日 13時) (レス) id: 22cb640d25 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:陽毬 | 作成日時:2021年6月14日 17時