幼魚と逆罰編 第1章 5 ページ37
吉野side
「おはよー、順平君」
ふと呼び声によって目を覚ますと、辺りは昨日、自分で眠りについた自分の部屋ではなく、全く知らない場所だった。
そして、目の前には呼び声の主であろう五条さんがいる。
「順平君達には悪いんだけど、君を1回高専で預からせて欲しいんだ」
「は?」
五条さんは「勿論、凪さんも一緒に」と付け加え、僕があまり好きじゃない、貼り付けた様な、胡散臭い薄い笑みを浮かべる。
高専って真人さんの敵地じゃないか。
どうして僕はそんな場所に……。
「実はね。昨夜君が眠った後、凪さんが呪霊に襲われ掛けたんだよね。呪霊に心当たりある?」
正直呪霊の心当たりなんてどうでも良かった。
それより……。
「母さんが呪霊に襲われ掛けたんですか?!」
「うん」
五条さんは平然とした顔で答える。
その平然さが不気味に感じ、思わずビクリと体を揺らした。
「はは。そんな気張んないでよ。私は君が1つだけ答えてくれれば、それで十分なんだよ」
五条さんは人差し指を左右に揺らしながら、昨晩とは全く違った怪しい笑みを僕に向ける。
昨晩の笑みがまるで嘘の様だった。
もしも、答えなかったら、どうなるんだろう?
「君、顔面に継ぎ接ぎのある呪霊と関係ある?」
その質問の呪霊は明らかに真人さんを指していた。
それに気付いた途端、僕の顔に緊張が走り、ピリリと引き締まる。
真人さんだとしてそれが何だ?
呪霊
まるで、僕と僕を苛めた奴等の様に。
もしも、僕が「関係ある」と言ったら、真人さんはどうなるんだろう?
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作者名：陽毬 | 作成日時：2021年6月10日 16時
