14枚目 ページ15
桜庭はここまで全て想定内の出来事だった。
伊井野が投票で吊られたときは「あ〜あ」と思った程度。
初心者を残しておけば、上手く言いくるめて議論を進められると考えていたが、
まぁこれはやむを得ない流れである。
ここで桜庭、思い付く。
今夜、白銀か四宮のどちらかを殺してしまえば勝利は確実。
でも、ここで石上を殺すとどうなる…？
それで私が狂人だと名乗り出る。
これは石上で確定なので被りはあり得ない。
しかも殺せば明らかな矛盾が生じ、私への疑いはほぼ無くなる。
ここまでなら、ゲームを楽しむ貪欲さがあれば思い付くであろう。
しかし、彼女は更に考えていた！
狂人と言えば、二人は人狼が勝つのを阻止しようと人狼のフリをする。
そしてお互い違うチームだと分かれば、
この人たちは罰ゲームのことしか考えられなくなる！
普段の鉄の仮面引っぺがして、墓場陣に滑稽なお遊びを見せてやろう…
そう！ここまでで分かる通り、彼女は「経験者」！
しかもリアルとネット共に経験済み、
最大20数人の村を勝利へ導いたことのあるヘビープレイヤーである！
このゲームが始まる前から、既に下準備を始めていた！
「お二人が嘘をついてること、伊井野さん以外気付いてましたよ？
人狼を探すゲームで人狼になりきる様…
実にお見事でしたよ〜ほ、ん、と、う、に」
「途中から共感性羞恥で見ていられませんでした…」
「ホント、見てるこっちが小っ恥ずかしい…」
桜庭に続いて、両手で顔を覆いながら藤原と石上が言う。
白銀と四宮に大きめの精神的ダメージが入る。
対して桜庭、満面の笑みで赤くなる二人をからかう！
日頃の庶務業務で積み重なったストレスが、こんな形で発散されようとは！
だが桜庭、まともな人間とだけあり、程々で冷静を取り戻す。
「まぁいじるのはこの辺で。罰ゲームは何にしましょうか…」
考え込む桜庭、震える役員たち。
人狼ゲームによって、すっかり桜庭のイメージは変換されていた。
「じゃあ、村人チームは私に耳打ちで、
ここ最近生んでしまった黒歴史を教えて下さい〜」
ということで、桜庭に弱みを握られて騙し合いは幕を閉じた。
「あ、俺はジュースかお菓子どっちか一つ奢って下さい」
「死んでも嫌」
「伊井野さんや…私が代わりに買おっか？」
「そんなわけにはいかないから…自分で…」
「あぁ…財布潰れちゃう…どうどう…」
「お菓子一つ買うのに命かける子、私初めて見ました」
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作者名：帳 | 作成日時：2022年5月17日 16時
