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「桜庭、生徒会に入ってくれないか？」
十月中旬、珍しく白銀会長に呼び出されたと思えば、まさかの生徒会へのお誘いだった。
「まぁ、会長直々にお誘いいただけるなんて滅多に無いことですし、
私もやること無くて暇な毎日を過ごしてますし、別に構わないのですが…」
言葉に詰まる私を見て、不思議そうな表情を見せる会長。
思ったままの言葉を口にする。
「何か気がかりなことでもあるのか？」
「もちろんありますよ、一番気になることが…
…何で！？何でそこで私なんですか！？」
桜庭A、秀知院学園一年生。
彼女の脳内は今、パニック状態に陥っていた。
「私、確かに人脈は広いですけど他に何も無いじゃないですか！
部活動も所属無し！委員会等も活動実績皆無！マジで特に何も無いのになぜ私！？」
己の「存在価値」！
この半年、ろくに物事に誘われなかった桜庭は、己の存在価値が地に着くほど低くなっていた！
「お、落ち着け桜庭…別に表立った実績とかは関係ないぞ？
面倒なら断ってくれて構わんが…」
「断るわけないじゃないですか！会長からのお願いですし！
むしろ生徒会室に入り浸っても役員と仲良くしても全部合法になるじゃないですか！」
「犯罪者みたいな言い草やめような！？」
「休日にショッピングしたり長期休暇に思い出作りしたり、
何気ない日常の会話が後にかけがえのない思い出に…」
「重い重い重い」
またこれに加えて「青春」に対しての憧れ！
彼女は小中と「青春」と呼べる思い出が出来たことはただの一度も存在しない！
このタイミングでの白銀の誘いは、彼女の自己肯定感と憧れへの強い執念を増幅させ、
一時的な「ハイ」の状態に陥れてしまったのである！
「何で私なのかは分かりませんがありがとうございますやります」
「お、おう…その気なら明日、生徒会室に来てくれ」
「行きます、ありがつおうごさいます」
「誤字ってるぞ落ち着け、生徒会は逃げないから」
「逃がしません」
「怖っ」
冷や汗を拭いながら、会長は私の元を後にする。
「珍しく取り乱した…」
やっと冷静な判断が出来るようになった私は、自身の発言を振り返り恥ずかしく…
「でも会長だからいっか〜バラされそうになったら四宮さん関連で取引しとこ」
…なんてことも無く脅せばいいや、で解決した。
違う違う、「取引」ね「取引」。
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作者名：帳 | 作成日時：2022年5月17日 16時
