101話 ページ8
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「なるほど、新聞がどうしても埋まらんと。
まあ来月分は書くことが少ないからな」
情けない声の主、チーノくんが助けを求めに来た理由は、来月発行の学校新聞の件だった。
自分の文章力が無いから上手く最後までスペースを使い切れないのだと言う。
『別に、チーノくんは文章力が無いって訳では無いと思うよ。
エーミールさんのトレースをしなくても、チーノくんのやりたいようにやれば良いのに』
彼は、前任のエーミールの文章を見て気負いし過ぎている。
書く人が変わったら、文章の雰囲気なんてガラリと変わるものだから、お前もあの人の様に文章を書け！なんて怒られることは無いだろうに。
「エーミールのはな、文字が結構小さいねんな」
「ああ。確か、前の人らの文字の大きさじゃ足りなくなるからと、アイツが勝手に改変していたはずだ」
「え、文字の大きさ変えていいんですか！？」
「規定は無い」
「それを早く言ってくださいよ……！」
口ではグルッペンさんに文句を言いながらも、表情はさっきより固くない。
肩の荷が降りた様で何よりだ。
『チーノくんは努力家だね。
私なら早々に自分勝手に改変しちゃう』
「うっ、その手が思いつかないなんて……」
『渡された見本を見て、それに忠実であろうとした結果でしょ？
私学校新聞読んだけど、エーミールさんが書いたのかと思うくらい文章力が優れてたよ。本当に凄い』
あれは普通に読み応えのある新聞だった。
思ったことをそのまま伝えると、彼は今度こそ安心したように笑った。
「ありがとう、ございます……」
嬉しそうに笑ったが、彼からの御礼は何故か敬語だった。
『何で敬語？』
今まで敬語なんて一切使ってこなかった彼が突然敬語になったため、思わず聞いてしまう。
彼はその問いに彼は答えることなく、首を傾げる。
分からない様だ。
一瞬チーノくんの真剣な瞳が私に突き刺さる。
が、すぐに逸らされ、彼は笑顔で生徒会室を去って行った。
「何やったん、アレ」
『分かりませんよ』
私達も真意を推し量ることはできず、しばらく手を付けていなかった課題を再開させた。
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作者名：叶海 | 作成日時：2023年6月30日 7時
