98話 ページ5
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「A〜！飯食お！」
昼休みに入るなり、ゾムさんが廊下からひょこりと顔を覗かせる。
まさかの来客に、それまで喋っていたショッピ君と私は思わず顔を見合せてしまった。
「いつの間にそんな仲良くなったん？」
態々他学年まで飯誘いに来るなんて珍しないか。
なんて言いながら、ショッピくんが廊下の方へ目を向けた。
『ゲームで気に入られたかな』
「相当上手いやん」
正確には、元々仲が良かったのだけど、言ったところで仕方がない。
『ショッピくんもチーノとか誘ってまた今度食べよ』
「おん。チーノにも言っとくわ」
『じゃあ、また後でね』
お弁当を持って、廊下で私を待つ彼の元へと向かった。
「屋上やな！」
後ろにいる影にも聞こえるような声でそう宣言すると、ゾムさんは私を連れて歩き出した。
「ショッピくん、記憶はまだ取り戻してないよな？」
屋上の適当なスペースに腰を下ろすなり、ゾムさんがそう聞いてくる。
私はお弁当を広げながら、少し考えた。
特に思い出したような素振りも無かったし、昔と比べて若干の距離を感じる。
思い出してる事は無いだろうな。
『はい。まだのはずです』
「せやんな。
Aを見る目、前世ん時と一緒やったな〜」
『友人として認めて貰えたんですかね』
「……ま、そーゆー事だと捉えてええと思うわ」
私のお弁当の中にある卵焼きを彼が頬張る。
美味っ、なんて言いながら次はウィンナーを盗っていった。
『自分の食べてくださいよ』
「すまんすまん」
全然悪いと思ってなさそうなゾムさんは、ウィンナーもお気に召したらしく、どこのや、なんて呟いていた。
そんなのわざわざ確認してない。
知りませんよ、と伝えるとちょっと残念そうにしていたので罪悪感が湧いた。
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作者名：叶海 | 作成日時：2023年6月30日 7時
