【d!】茫々 (ページ4)

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97話ページ4

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『間に合った……！』

私が教室に入ると同時にチャイムが鳴った。

少し乱れた息のまま席に腰を下ろせば、隣の席からクスリと笑い声が聞こえた。

「アンタでも寝坊とかするんや」

『そりゃあするよ。人間だし』

それにしても、何故寝坊だと分かったんだ。

私のそんな考えが顔に出ていたのか、隣の席の奴…ショッピ君は私の髪の毛の先を指さした。

「髪、跳ねてんで」

普段は直してきとるやろ。

髪の束を手でするりと触って、笑う。

そこに視線を向けると、成程。

しっかり跳ねていた。

「って、距離近いな。ごめん」

パッと離された彼との距離。

そういえば、近かった。

“Aの髪、サラサラしてて好き”

なんて言いながら私の髪をとく前世の彼を、思い出した。

『ううん、大丈夫』

曖昧に笑って、少しだけ彼から視線を逸らす。

彼は離れた距離のまま、再度会話を紡いだ。

「そういや何で寝坊したん？」

『ゾムさんにゲームに誘われて、ね。
FPSしてたらこんな時間に』

「あーなるほど。
確かに際限なくやりそう」

『気づいたら凄い時間でびっくりしたよ』

あれはもう、本当に、寿命縮んだかと思った。

その時の状況を思い出しながらそう言えば、ショッピくんは可笑しそうに笑った。

ガラガラと扉の開く音と共に先生が入ってくる。

それを合図に私とショッピ君は会話を止め、前へと向き直った。