30秒 【 ころん 】

４２ 秒 ページ43

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彼の家に行くのも もう慣れた。



どこに何があって置いてあるのか、それなりに覚えてきた。




「 ふぅ。…ふぁあ、くそねむい、昨日から寝てないんだよねぇ、」


『 倒れられても困るんでちゃんと寝てくださーい？』



編集机にぐでーと項垂れる
微かに見える目の下の隈

動画の編集にライブのリハーサルにって大忙し
寝る暇もないんだろうなぁ。


「 ねぇ、膝枕してよ。そしたら、ぐっすり眠れる」


私の有無を聞かず膝に頭をゴロンとする。

目を閉じて嬉しそうに私の手を握る。


思い出す。
あの時、私が彼に握手しに行かなかったら
きっとこんな風になることは無かったんだろうな。


こんな近くで見守ることもなかったんだろうな。


あの日の私に感謝。


偶然引き合わせてくれた、運命の神様に感謝。

神様はきっと私に味方してくれたんだろう。



私に与えられた30秒って短い時間。
人生でもう経験することの無い幸せを貰った。



でもね、今は 彼の1秒1秒を独り占めできるの。
こんなにも幸せを貰ってる。



きっと誰でもこの物語の主人公になれる。

人間誰だって好きな人のためなら変われるよ。

だから、諦めないで。



そうどこの誰かも分からない人に問いかけて
私も目を閉じた。






彼の隣にいれて私は幸せです。







【 30秒 " fin " 】

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