第10幕 ページ11
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私は稽古場の外へ出て、近くの自動販売機の影にしゃがみ込んだ。
そして今更、稽古場から出てきたことに後悔した。
どうしてあんな乱暴な言い方になってしまったんだろう、
どうしてあれくらい笑って流せなかったんだろう、
そう考える度、頭が痛くなった。
すると、誰かがこっちへ歩いてきて自動販売機で買い物を始めた。
私は恥ずかしさで小さくなった。
人がいなくなったかと確認するために少し顔を上げると、冷たいペットボトルが私の頬に当たった。
「っ……!!なにして…」
私がペットボトルを払い除けると、そこにいたのは大介君だった。
私はその場で固まった。
「ごめん、そんなに驚くとは思ってなかったや。」
大介君は少し笑いながらそう言った。
私はその場から逃げようとした。
でも、大介君が私の腕を掴んで離さなかった。
「離して、ください。」
「嫌だ。なんで俺からも逃げるの。」
「俺は…大介君に合わせる顔がありません。」
私は下を向いた。
涙がこぼれた。
「…ねぇ、俺ってやっぱ、頼りないかな。」
大介君の言葉が急に弱々しくなる。
「俺、言ったよね。
できる限りの事はするって、なんでもいいんだよ、
話ならいくらでも聞くし、相談だって上手く答えられないかもしれないけどして欲しい。
誰かに虐められてるなら俺が助けるし、
俺に近寄らないで欲しいなら俺は、」
私は、大介君に何を言わせているんだろう。
こんなにも弱々しくて、今にも泣き出しそうな声で大介君に話させて、
私は何をしにここまできたんだろう、
やっぱり私は弱いだけで、ただ泣くことしか出来なかった。
すると、大介君は私の腕を引っ張って後ろから抱きついてきた。
「…泣かないでよ。
俺、女の子への声のかけ方とか、
全然分かんないんだよ…」
「翔は男です。女扱いしないでください。」
私が振り向くと、思ったより近くに大介君の顔があって、私は驚きを隠せなかった。
私は見開いた目をゆっくり逸らした。
「ごめん、やっぱり俺には女の子にしか見えないや。」
大介君は私の頭に顔を埋めた。
私は何も返せなかった。
「もどろう、」
私が”はい”と小さく返事をすると、大介君は一気に力が抜けたようにヘラっと笑った。
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ココアちゃんだよん - 続きが気になります!! (2022年7月26日 11時) (レス) @page17 id: d0534e1594 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:金春 | 作成日時:2017年12月21日 16時