60、修繕の儀 ページ10
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鶴丸国永side
「どうだ、驚いたか？
戦いに生きるものには“間合い”というのがあってな、ここの中にあれば何をしようとこの刃は届くのさ。」
刀を鞘に戻せば泉は止めていた息を吐いた。
ちょっといじめすぎたかな？
「さぁ、俺達に構わず修繕の儀を始めてくれ。」
さっきより心做しか青くなった顔で頷くと泉は再び柱に手を当てた。
ひとつ息を吸い込むと辺りの空気が張りつめる。
次第に泉の軽やかな髪がはためき始めた。
変化は突然に起こった。
泉を中心に何か暖かな霊気が湧きだしてきた。
それは瞬く間に本丸を包み込む。
一際大きな波が押し寄せたかと思うと不思議なことが起こった。
まるで草花が芽吹くように血の滲んだ畳が青く甦った。芳しい藺草の香りが辺りを包む。
黒く淀んだ柱は檜の香りのする真新しい柱へと、欄間のその細部まで鮮やかに蘇っていく。
破れた襖もそれに遅れることなく艶やかさを取り戻した。
そのままその波は広間を出て広がっていく。
空気までもが入れ替わっていくようだ。
少し冷たく感じるような澄んだ空気が辺りを満たした。
「これは驚いた…」
図らずも言葉が零れた。
端くれとはいえ神の俺ですらも、一介の人間に過ぎない彼女に神々しさを覚えていた。
「…石切丸？どうした！？」
隣を見てぎょっとした。
石切丸が、泣いていた。
声も出さず、目を見開いたまま泣いていたのだ。
「石切丸！どうしたんだ！！」
「…鶴丸…君には聞こえないのかい…？」
「何がだ！？」
「…彼女の声だよ。この霊気は彼女の声をはらんでいるんだ。」
狩衣の袖で静かに涙を拭うと、石切丸は泉を見据えた。
「…その声はなんて言ってるんだ？」
「『ここに住まう彼等に安らぎがありますように』
『暗く苦しい記憶から解放されますように』
『どうか彼等を、護って』」
息を呑んだ。
ただ俺たちのことだけを想った優しい優しい言葉たち。
そんな風に想われたことなんて今まで一度もなかった。
「分かったよ、鶴丸。彼女がなぜ本丸の修繕なんか出来たのか。
彼女は自然の寵愛を受けた水の巫女なんだ。
清らかで儚い、悲愛の巫女。」
「悲愛…？それはどういう…」
「身を裂かれるような苦しみに耐え続けるものがある時水の巫女になるという。
己を顧みずただ相手の幸せだけを願う、悲愴と慈愛に充ちた巫女ということだよ。」
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紫水(プロフ) - ルナさん» うわぁほんとだ。コメントありがとうございます！修正します！ (2019年8月2日 10時) (
レス) id: aa0c16ca22 (このIDを非表示/違反報告)
ルナ(プロフ) - コメントすみません！沖田君は、一番組組長だと思います！ (2019年7月25日 9時) (レス) id: 3371ec9e8a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紫水 | 作成日時：2019年6月8日 8時
