44、虎くん ページ44
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五虎退side
目が覚めちゃいました。
同室の兄達はみんなまだ寝てるみたい。
広い部屋で兄弟みんなで布団を並べて眠る。
夢にまで見た、恋しかった光景。
(もう、自由なんだ。助かったんだなぁ。)
暗くて寒くて怖いあの部屋にはもう戻らなくていいんだ。
それが信じられないや。嬉しいな。
…あれ？
「虎くん？」
虎くん達の姿が見当たらない。
ふと見ると外に続く襖が薄く開いていた。
虎くん達も部屋から出るのは久しぶりだから、外で遊びたくなっちゃったのかな。
虎くん達の気持ちを考えていたら、なんか僕までムズムズしてきた。
(僕も虎くん達と遊んでこよう)
寝てる兄弟達を起こさないように静かに外に出た。
まだ日が登ってから半刻も経ってない。
それでも、遠くに見える朝日が眩しくて仕方がなかった。
綺麗だな、すごく。
足取りも軽く縁側から飛び降りる。
寝巻きのまま中庭を走った。
気持ちがいいなぁ。
明け方の冷たい風を受けながら虎くんのお気に入りの遊び場を回ってみる。
「とーらくん！」
まずは厩。
虎くん達は馬たちに遊んでもらうのが好きなんだけど今日はここじゃないみたい。
「ここかな？あれ？」
池のほとりの砂場。ここにもいない。
鯉たちを追いかけて砂場をぐるぐる走るのが好きだった。今は池が濁っちゃってるけど。
「虎くーん？…えっ。」
庭の端の大きな桜の木。
木登りして遊んでるかと思ったんだけど、ここにもいなかった。
「虎くん、どこいっちゃったんだろう。」
するとどこからか食べ物の匂いがしてきた。
何かが焼ける匂い。
きゅるるるる…
ぅぅぅいい匂い…。
匂いに誘われるままふらふらと歩いていく。
「あっ！虎くん！」
あれだけ探してもみつからなかった虎くんがこんな所にいた…って、ここは…
(離れだ！！)
とっさに草陰に隠れると同時に引き戸が開いた。
「声が聞こえたから誰か来たのかと思ったら…こんな可愛いお客さんだったなんて！」
草陰から覗くと、昨日の女の人がいた。
しゃがんで虎くん達に手を伸ばしてる。
ガブッ！
(あっ！！)
虎くんが女の人の手に噛み付いた。
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翡翠(プロフ) - バッドエンドは残念です (2019年9月3日 1時) (携帯から) (
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作者名：紫水 | 作成日時：2019年1月27日 9時
