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【第1章 :8話 嵐の前触れ】 ページ10

―――貧民街の最奥。そこに、盗品蔵と呼ばれている建物があった。

「やっと俺の出番だな!ここは俺に任せてくれ」

先程、Aが "居なくても平気" と言った事もあるのか、やる気満々なスバル。
確かに、交渉等は得意そうに見える。だが……

『いや、私が……』

Aは、『私が行った方がいい』と言いかけて止めた。
何があるか分からないから、万が一に備えて自分が行くべきだ。
……と、考えていたのだが腕捲りまでしているスバルの勢いは、止められそうもない。


「本人も行く気満々だし、スバルを信じてみましょ、A。……上手くいったら儲け物みたいな感じで」


エミリアも同じ事を思ったのか、スバルが先に入ることに肯定し、Aに同意を求める。
Aは、断る理由も無く素直に頷いた。


「そこは後半は本音じゃなくて、"私の為に頑張って"ぐらい上目遣いで言った方がやる気出るぜ?」

「そんな無理をしてなんて言えないもの。でも、頑張って」


(エミリア様……うん。本当に、あらゆる意味で嘘がつけないよね)


僅かに苦笑したA。其から懐に手を差し入れると、白い結晶――マグナイト鉱石を取り出して壁にぶつける。
にわかに白い光が溢れ始めた。

『スバル』

「ん?――おっと」

Aは、マグナイト鉱石を投げて渡す。
両手で受け止めたスバルは、手の中で淡く光る其を珍しげに眺めた。

『せめて灯りは必要でしょ。死なない程度に役立ってもらわなきゃ困るから』

「たかが交渉。さすがに死にはしないだろ…ま、サンキュ。気がきくじゃん」

『煩い。早く見てきてよ』

素直に礼を言われると、こっちが調子狂いそうだ。背を押しAはスバルを急かす。

「じゃ、ちょっと見てくる。帰りは遅くならないけど、先にご飯食べてていいからね」

「バカなこと言ってないの。気をつけてね」

エミリアとAに送り出され、スバルの姿は扉の向こうに消えていく。
完全に姿が見えなくなった後、エミリアはポツリと呟いた。

「A、私の嘘に付き合って貰ってごめんね」

『エミリア様……』

「……徽章を取り戻せたら、スバルにも謝らなきゃ。だから、無事に戻ってきて」


――――ダアンッ。何かは分からない。
分からないが凄く嫌な音がしたのは、エミリアの呟きから直ぐ後のことだ。

【第1章: 9話 始まりの終わり】→←【第1章:7話 夕闇の貧民街】



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玲紋。 - 面白いです!読んでいて楽しいです!先が気になります。更新、頑張ってくださいね! (2017年2月1日 19時) (レス) id: 717061f029 (このIDを非表示/違反報告)
暁風の夢(プロフ) - ラキさん» すみません…現実の生活と小説を書く事の両立が難しくなっていまして本当に申し訳ないです。迷惑をおかけしますが気長にお待ち下さい。 (2017年1月30日 21時) (レス) id: 050b98d021 (このIDを非表示/違反報告)
ラキ - 最近更新してませんねー (2017年1月29日 22時) (レス) id: e83b796b67 (このIDを非表示/違反報告)
暁風の夢(プロフ) - 飾華さん» 最高とまで言って下さり有難う御座いました!更新遅くなってすみません!なるべく出来るように頑張ります (2016年10月18日 22時) (レス) id: 050b98d021 (このIDを非表示/違反報告)
飾華 - もう最ッ高です!次の展開が楽しみすぎる (2016年10月18日 17時) (レス) id: 7cff2cbe6d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:暁風の夢 | 作成日時:2016年6月3日 21時

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