【第１章:７話 夕闇の貧民街】 ページ9
―――日が傾き始めた夕暮れ時。
陰鬱な雰囲気の漂う貧民街は、居心地が非常に悪い。
人々がAの姿、いや、騎士団の制服を見れば、姿を隠す者もいれば殺気剥き出しで睨み付けてくる者もいる。
貧民街の住人からすれば、悪を取り締まる騎士団など良い印象が持たれていないのは明白で。
盗みをしないと生きていけない。
貧民街に住む人々は、そういう世界の人間なのだ。
いくらAがルグニカを守る騎士団の１人だとしても、A１人の力は、ちっぽけな物で。大切なモノは手から溢れ落ちていく。
精霊騎士としての力も、この体も、Aという存在全てさえも。
“他人によって作られた物“ であるAには、手の中にある物を守るだけに精一杯。
溢れ落ちたモノに手を差し出すことなんて、出来やしないんだ。
「A、大丈夫？」
聞き慣れた銀鈴の声音に、ふと我に返ればAの隣を歩くエミリアの心配そうな顔が目に映った。
そのエミリアの背後からは、スバルが「怖いのか？」なんて、からかってくる。
「リアの背に隠れておきながら、そんなこと言えるの？スバル」
「言えませんね！背後霊のように密着しないと行けないからな」
………パックの指摘に、スバルは肯定。
逃げ腰発言にAは呆れるしかなかった。
『スバル、引き返しても良いんだよ？別に居なくても平気だし』
「見てろよ！必ず役にたってやるからな！」
悔しそうに歯を食いしばるスバル。
その傍らで、いつの間にかAの調子が元に戻ったことをエミリアは密かに安堵する。
「でも、頼むよ。ボクはもう限界だ」
パックは、弱々しくエミリアの首にもたれ掛かる。薄暗くなってきた時間帯。パックが顕現出来る時間のタイムリミットが来てしまったのだ。
「おう！任せとけ！」
自信ありげに答えるスバルに満足したのか、パックはコクリと頷いた。
「ボクの妹と１人娘は良く無茶するからね。それだけは避けるんだよ」
「分かってます。子供じゃないんだから」
父親代わりとして忠告するパックに、エミリアは口を尖らせた。
パックの妹になったつもりは無いんだけど。
そもそも血の繋がりは無い。
『大丈夫だから』
Aは簡潔に声をかける。それは、パックを安心させる為か、自分に言い聞かせる為か。
「ありがとう。ゆっくり休んで」
エミリアの声かけと共にパックは、クリスタルの中へと消滅した。
【第１章 :８話 嵐の前触れ】→←【第１章:６話 ナツキ・スバル】
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玲紋。 - 面白いです！読んでいて楽しいです！先が気になります。更新、頑張ってくださいね！ (2017年2月1日 19時) (
レス) id: 717061f029 (このIDを非表示/違反報告)
暁風の夢(プロフ) - ラキさん» すみません…現実の生活と小説を書く事の両立が難しくなっていまして本当に申し訳ないです。迷惑をおかけしますが気長にお待ち下さい。 (2017年1月30日 21時) (レス) id: 050b98d021 (このIDを非表示/違反報告)
ラキ - 最近更新してませんねー (2017年1月29日 22時) (レス) id: e83b796b67 (このIDを非表示/違反報告)
暁風の夢(プロフ) - 飾華さん» 最高とまで言って下さり有難う御座いました！更新遅くなってすみません！なるべく出来るように頑張ります (2016年10月18日 22時) (レス) id: 050b98d021 (このIDを非表示/違反報告)
飾華 - もう最ッ高です！次の展開が楽しみすぎる (2016年10月18日 17時) (レス) id: 7cff2cbe6d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：暁風の夢 | 作成日時：2016年6月3日 21時
