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【第1章 : 5話 貴方のおかげで】 ページ7

「えっと、その、泣かないで?お姉ちゃんはあなたに何もしたりしないから」

Aとスバルが向かうと、今にも泣き出しそうな少女の姿が。
エミリアが少女にかける言葉は優しいものだが、保護者を見失って心細さに震える幼子には伝わらないのだった。

どうしたものか、とAは思考しかけ――不意にコインを取り出すスバルの手を目に留めた。

『何をするの?』

「まあ、見てな―――ここに取り出したるは、1枚のギザ十にございま―す」

「え、スバル?」

割り込んだスバルの口上に、エミリアが呆気に取られた声を出す。彼女の隣に立ったスバルは、そんなエミリアの反応に苦笑した。

そうして、始めたのは簡単なマジック。
右手にあった筈のコインは、握り締めた拳によって1度姿を消す。そして、スバルが撫でると女の子の髪の中から現れた。

「プレゼントしたげよう。貴重品だから大事にしてね」

渡されたコインを大事そうに抱えて、ぶんぶんと首を縦に振る少女。彼女からは、もう怯えの色は無い。


「ちょっと、スバル…今のってどうやったの?」
『今のは何?私にもどうやったか教えて』

「ああ、これはな――……やっぱ止めた」

スバルの左右には、興味津々なエミリアとA。目を輝かせる2人にスバルは手品のネタばらしをしようとして思い止まった。
悪戯心が芽生え、ニヤリと笑ってAを見る。


「サテラだけ耳かして。Aには教えてやんない」

『私にも教えてよねッ!』

本日何度目になるか分からない、怒りの余りに振り上げた拳。だが、今回はギリギリの所で避けられてしまった。

「ふふっ」
「会ったばかりなのに、スバルとAって本当は仲良しさん?」

少女と、エミリアがA達のやり取りに微笑んだ。だが、仲良しに見えてたまるか、とAとスバルは口々に

『違うから』
「絶対に違うよ。俺の恋路を邪魔する敵だからなコイツは」

ビシッ。スバルは勢い良くAを指差す。
またもや不快な思いしかしないが、微笑む少女を前に、そんな感情は跡形もなく消え去った。

『任せて。絶対にお母さんを見付けてあげるから』

Aは少女の頭を優しく撫でた
少女が笑顔を見せてくれるようになったのも、スバルのおかげだ。

“ありがとう“

口には出せないが、スバルに感謝したことについてはAだけの秘密。

【第1章:6話 ナツキ・スバル】→←【第1章 : 4話 放っておけなくて】



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玲紋。 - 面白いです!読んでいて楽しいです!先が気になります。更新、頑張ってくださいね! (2017年2月1日 19時) (レス) id: 717061f029 (このIDを非表示/違反報告)
暁風の夢(プロフ) - ラキさん» すみません…現実の生活と小説を書く事の両立が難しくなっていまして本当に申し訳ないです。迷惑をおかけしますが気長にお待ち下さい。 (2017年1月30日 21時) (レス) id: 050b98d021 (このIDを非表示/違反報告)
ラキ - 最近更新してませんねー (2017年1月29日 22時) (レス) id: e83b796b67 (このIDを非表示/違反報告)
暁風の夢(プロフ) - 飾華さん» 最高とまで言って下さり有難う御座いました!更新遅くなってすみません!なるべく出来るように頑張ります (2016年10月18日 22時) (レス) id: 050b98d021 (このIDを非表示/違反報告)
飾華 - もう最ッ高です!次の展開が楽しみすぎる (2016年10月18日 17時) (レス) id: 7cff2cbe6d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:暁風の夢 | 作成日時:2016年6月3日 21時

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