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【第2章:9話 腸狩り】 ページ20

「君は!!重症だ、早く傷を治癒しないと______っ」


ラインハルトは最後まで言い終わることが出来なかった。直感的に床を蹴り、後方に跳び下がる。元々いた所には、ザクッ、と木製の床に漆黒のナイフが突き刺さる。



「―――もう少し待って頂けると嬉しいのですが。彼とAの回復が終わるまで」

「折角、楽しませてくれそうな方達がたくさんいるのだもの。休んでる暇はないわね」



壁にめり込んでいた黒装束の女は、片手でナイフを弄びながら、ふふっと微笑む。
女を睨み付けるラインハルトは、今、王都を騒がせている女の正体を口にした。



「腹狩り、エルザ・グランヒルデ。貴方の行いは決して見過ごす訳にはいかない。そちらも、ご希望のようですし、少々付き合って貰っても?」

「ふふっ、喜んで」



盗品の一つなのだろう。近くに落ちていた細身の剣を拾い上げる。エルザも、両手にナイフを構えて戦闘体勢に入った。

向かい合う両者。ラインハルトは、ちらりと視線を動かす。
その先には、力強く頷くエミリアとAがいて_________




「いかなきゃ……」

ラインハルトの視線を受けて、Aはゆっくりと体を起こした。
まだ完全に治癒しきっていない、と慌てるエミリアにAは微笑んで見せた。


「私よりあっちに倒れているスバルの方が重症だから…早く行きましょう、エミリア様。私なら大丈夫です」

「……分かったわ。A治癒の間は無防備になる。だから、周囲をお願いするわね。でも、あまり無理はしないで」

「はい。有難う御座います」


カキン、カキン――剣とナイフが絶えず交差する。壁に沿って、素早くスバルの元に移動する。

「重症だわ……気を確かに持って!必ず助けてあげるから」

エミリアはスバルの腹部の中心に手を翳す。
治癒魔法が展開され、淡い光が傷を包み込んだだ。

瀕死な状態から回復させるのは、時間もかかる上に、大量出血している故にそれまで体が持つかどうか。
助かる望みが薄いことに、エミリアもAも唇を噛みしめる。


「大丈夫。このスバルって子を助ける為に、絶対に間に合わせてみせる……Aの為にも」

「私の為?違いますよ。スバルの為で……」


――――だって、主である私以外の人の為に、そんなに必死になることなんて珍しいじゃない。



エミリアの言葉に、大きく心が揺らいだ。

【第2章: 10話 初めての友人】→←【第2章:8話 盾となりて】



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玲紋。 - 面白いです!読んでいて楽しいです!先が気になります。更新、頑張ってくださいね! (2017年2月1日 19時) (レス) id: 717061f029 (このIDを非表示/違反報告)
暁風の夢(プロフ) - ラキさん» すみません…現実の生活と小説を書く事の両立が難しくなっていまして本当に申し訳ないです。迷惑をおかけしますが気長にお待ち下さい。 (2017年1月30日 21時) (レス) id: 050b98d021 (このIDを非表示/違反報告)
ラキ - 最近更新してませんねー (2017年1月29日 22時) (レス) id: e83b796b67 (このIDを非表示/違反報告)
暁風の夢(プロフ) - 飾華さん» 最高とまで言って下さり有難う御座いました!更新遅くなってすみません!なるべく出来るように頑張ります (2016年10月18日 22時) (レス) id: 050b98d021 (このIDを非表示/違反報告)
飾華 - もう最ッ高です!次の展開が楽しみすぎる (2016年10月18日 17時) (レス) id: 7cff2cbe6d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:暁風の夢 | 作成日時:2016年6月3日 21時

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