【第2章:8話 盾となりて】 ページ19
『スバル……』
貧民街をひたすら歩き 辿り着いた2度目の盗品蔵。先程と変わらぬ姿のまま佇んでいた。
だが、嫌な物音と内容は聞き取れないが、話声らしきものが1つ。
問題は 中にいる人達の安否確認。それが最優先事項だ。
Aは何の迷いなく扉に手を伸ばす―――ばあん、と開け放つと共に、黒い影が襲いかかったのは、ほぼ同時だ。
「A!」
「ッ!!」
――――セカイが、時の感覚が、引き延ばされる。
戦場を生きる者の勘が、回避せよ コンマ数秒という早さで警報を鳴らした。
ラインハルトは、どうだ。
彼も幾多の修羅場をくぐり抜けて来た戦士。危機察知能力が働き、直感的にAとエミリアを庇うようにして前に踏み出し、影即死に近い威力を誇る足蹴りを繰り出している最中であった。
自分は、どうすれば良い。
剣を抜く―――そんな時間は無い。
回避――背後にいるエミリアに刃が届いてしまう可能性がある。
ならば、後は先輩に任せて
『盾』として仕事を全うすることに。
それは、Aにとって胸に刻んだ生き方であり、ほとんど直感的な判断だった。
其れゆえに、ほんの刹那的な時の差で、Aの腹をナイフが引き裂く。相討ちのような形で、影も攻撃をまともに受け、壁際まで、吹っ飛んでいった。
『守る』ことの代償
血華が、咲き誇る。
「Aッ!?」
「Aっ!!!」
エミリアの紫紺の瞳が驚愕に彩る。
重力のままに倒れ行く体は、エミリアの雪のような白いローブに包み込まれた。
「死なないで、A!今 助けるから」
「僕が未熟なせいで……エミリア様、治療は」
「大丈夫!まだ間に合うわ」
「Aをお願いします」
せわしなく飛び交う会話。霞がかったAの意識は、反射的に行われた治癒魔法で、徐々に引き戻されていく。
エミリアがAの回復を行うその一方。吹っ飛び、壁にめり込んだ影を警戒してラインハルトが建物の奥へと足を踏み入れた。
「これは」
出入口からは分からなかったが、盗品蔵は、血の海と化していた。
「ぁう…うぁ……」
既にピクリとも動かない少女と老人。
だが、二人のものではない別の誰かのうめき声が弱々しく聞こえた。
「誰だ!?……ッ!君は!!」
――――短い黒髪に、グレーのジャージ。襲い来る苦痛に顔を歪めた青年が倒れていた。
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玲紋。 - 面白いです!読んでいて楽しいです!先が気になります。更新、頑張ってくださいね! (2017年2月1日 19時) (レス) id: 717061f029 (このIDを非表示/違反報告)
暁風の夢(プロフ) - ラキさん» すみません…現実の生活と小説を書く事の両立が難しくなっていまして本当に申し訳ないです。迷惑をおかけしますが気長にお待ち下さい。 (2017年1月30日 21時) (レス) id: 050b98d021 (このIDを非表示/違反報告)
ラキ - 最近更新してませんねー (2017年1月29日 22時) (レス) id: e83b796b67 (このIDを非表示/違反報告)
暁風の夢(プロフ) - 飾華さん» 最高とまで言って下さり有難う御座いました!更新遅くなってすみません!なるべく出来るように頑張ります (2016年10月18日 22時) (レス) id: 050b98d021 (このIDを非表示/違反報告)
飾華 - もう最ッ高です!次の展開が楽しみすぎる (2016年10月18日 17時) (レス) id: 7cff2cbe6d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:暁風の夢 | 作成日時:2016年6月3日 21時