【第２章:５話 フェルト】 ページ16
コンコン_____
盗品蔵の扉が叩かれ、ロム爺と向こう側にいる訪問者とで、色んな単語の掛け合いが行われた。それが、合言葉なのだろう。
「――待たせちまったな、ロム爺」
鍵を外した戸から姿を見せたのは、徽章を奪って行った小柄な少女。
セミロングの金髪に、宝石のような赤い瞳。チラリと見える八重歯。やや幼い顔立ちだが、文句無しの美少女だ。
……着ている服がボロくなければ、もっと良かったのに。と、内心思ったりする。
室内を見回した少女だが、不意にスバルに目を留める。
「あ？誰だよ、オイ。アタシ大口持ち込むから人払い頼んどいた筈だろ？」
「お前さんの気持ちは分かるがの。あの小僧っ子はお前―――フェルトに用があってここにおるんじゃ」
顔をしかめて、警戒心を強める少女―――フェルト。その、負の雰囲気を解くように「のう？」と、ロム爺は片目を瞑り、スバルに同意を求めて来る。
気遣いは有難いが、ウインクは余計。
………"ウインクする老人"
此れはこれで、滅多に無い貴重なのだろうが、二度目はご遠慮頂きたい。マジで。
「そう怖い顔すんなって。まずは、駆け付け一杯、ミルクでもどうよ」
「隙だらけの間抜け面……なに企んでてもかまやしねーけど、アタシはアンタの話がアタシにとって金になるしか興味ねー。本題、入っていいぜ」
「用があるのはお前が懐にしまってるっぽい宝石入りの徽章。言っとくけど、俺は手も足も出さない。出すのは口だけ。つまり、交渉しようぜ」
***
２人は、指定したテーブルにお互いに向かい合って座る。交渉という初めての事に対する緊張感が、今にもスバルを覆い尽くしそうだ。
コトン。気を利かせたロム爺が、ミルクをグラスに注いで並べた。
折角、用意して貰った物だから飲まないのは勿体ない。緊張をほぐす為にも、それを口に運べば、何か違う風味。
少し、味が薄いような…気がした。
「マズッ、水入れて薄めた？……この世界では、此れが普通なのか？」
「アタシも同じ感想だ、ロム爺。マズイぞ、コレ」
「どいつもこいつも人が好意で出してやっとるもんをマズイマズイと……」
散々に言われたロム爺だが、ふてぶてしい態度のフェルトの頭を撫でる。
ふやけたような顔つきのロム爺と、それを素直に受け入れるフェルト。
２人の姿は、本当に家族のようだった。
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玲紋。 - 面白いです！読んでいて楽しいです！先が気になります。更新、頑張ってくださいね！ (2017年2月1日 19時) (
レス) id: 717061f029 (このIDを非表示/違反報告)
暁風の夢(プロフ) - ラキさん» すみません…現実の生活と小説を書く事の両立が難しくなっていまして本当に申し訳ないです。迷惑をおかけしますが気長にお待ち下さい。 (2017年1月30日 21時) (レス) id: 050b98d021 (このIDを非表示/違反報告)
ラキ - 最近更新してませんねー (2017年1月29日 22時) (レス) id: e83b796b67 (このIDを非表示/違反報告)
暁風の夢(プロフ) - 飾華さん» 最高とまで言って下さり有難う御座いました！更新遅くなってすみません！なるべく出来るように頑張ります (2016年10月18日 22時) (レス) id: 050b98d021 (このIDを非表示/違反報告)
飾華 - もう最ッ高です！次の展開が楽しみすぎる (2016年10月18日 17時) (レス) id: 7cff2cbe6d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：暁風の夢 | 作成日時：2016年6月3日 21時
