【第２章:１話 消えた悪夢】 ページ12
「おや、久しぶりだねA……A？大丈夫かい？」
『へ……？』
Aの口から間抜けな言葉が零れ落ちる。
其もその筈、目の前には燃えるような赤髪の先輩、ラインハルトが心配そうにAを覗き込んでいた。
『…先輩…？何で……』
“……A…“
血溜まりに沈む苦しげな彼の声が脳裏に蘇る。
記憶の糸を辿れば、夕暮れ時、Aは、盗品蔵で
『エミリア様！！スバルは！？先輩、２人を治療しなきゃ！２人は何処！？』
ラインハルトの服の裾を力強く引き、詰め寄った。先刻、盗品蔵でAは両腕を無くし、エミリアとスバルは命に関わる程の瀕死なのだ。
“早く治療をしなければ“
気持ちだけが焦る。
だが、ラインハルトは、きょとんとした表情を見せた。何の事だか分からない、とでも言うように。
「落ち着いてA、スバルという人は知らないが、先程ラムと一緒にいるのを見かけた。君は何故、そんなに取り乱しているんだい？」
『私……さっき、盗品蔵で…』
視線を下に移すと、自然に視界に入る自分の両腕。瞳には、怪我１つ無い綺麗な肌が映った。
―――何で、気が付かなかったんだろう。
確かに切断された筈の両腕が元通りになっていることに。
冷静になって辺りを見渡せば、まだ日は高く明るい昼間。夕暮れ時では無い。
後ろを振り返ってみれば、近衛騎士団の詰所が佇んでいる。
「A？何があった？」
『すいません先輩、ちょっと待って』
Aの中で何かが引っ掛かる。正体を探すべく、問いの返答に待ったをかけた。
ただならぬ雰囲気に眉をひそめるラインハルト。
“おや、久しぶりだねA“
――――――そう、此が気にかかる。
ラインハルトは、さっき間違いなくAに、そう声をかけた。スバルに会う前と同じ言葉を。
―――――偶然……か？
「Aッ！」
桃色の髪のメイド、ラムが血相を変えて駆け寄ってくる。ラインハルトの姿に気付くと、彼に軽く頭を下げた。
「ラム、どうしたんだい？」
私の失態なのですが…と、ラインハルトが居る手前、いつもとは反対に控えめに言葉を発する。
その内容は、エミリアが迷子になったこと。
そう同じ事が重なる筈無い。
現実を疑いながらも、Aは、２回目の主探しへと踏み出した。
【第２章:２話 優しさに甘えて】→←【第１章: ９話 始まりの終わり】
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 286人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
玲紋。 - 面白いです！読んでいて楽しいです！先が気になります。更新、頑張ってくださいね！ (2017年2月1日 19時) (
レス) id: 717061f029 (このIDを非表示/違反報告)
暁風の夢(プロフ) - ラキさん» すみません…現実の生活と小説を書く事の両立が難しくなっていまして本当に申し訳ないです。迷惑をおかけしますが気長にお待ち下さい。 (2017年1月30日 21時) (レス) id: 050b98d021 (このIDを非表示/違反報告)
ラキ - 最近更新してませんねー (2017年1月29日 22時) (レス) id: e83b796b67 (このIDを非表示/違反報告)
暁風の夢(プロフ) - 飾華さん» 最高とまで言って下さり有難う御座いました！更新遅くなってすみません！なるべく出来るように頑張ります (2016年10月18日 22時) (レス) id: 050b98d021 (このIDを非表示/違反報告)
飾華 - もう最ッ高です！次の展開が楽しみすぎる (2016年10月18日 17時) (レス) id: 7cff2cbe6d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：暁風の夢 | 作成日時：2016年6月3日 21時
