全ては彼の、 *sb ページ5
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廊下からギャハハ！！と馬鹿みたいに大きな笑い声が聞こえてきて。
――騒めき出す教室、ピタリと固まる私。
その後に続く、踵を踏んだ靴で歩く特徴的な擦れる音とジャラジャラと金属が当たる音。
……アイツが、来る。
そう身構えた瞬間、ガラッと後ろのドアが開いて教室に足を踏み入れた2人組。
長身でスラッとした手足に爽やか笑顔が印象的な福尾くんと、チャラいの一言に尽きる柴田くん。
2人が登場した瞬間にクラスの女子が色めき立って、“亮くん今日も爽やかっ”“ゆーくんも眩しい！”とキャーキャーと騒ぐ。
…そんな中、私は彼の独特な存在感に息を呑んでいた。
踵がぺちゃんこになった上履きから覗く、場違いなくらい可愛いキャラクターソックス。
軽く腰パンしたズボンからは銀色のチェーンが伸びていて、後ろのポケットに長財布が刺さってる。
そして極めつけは、オーバーサイズな黄色のパーカーと…同じ色の髪の毛。
金髪をツンツンに立たせた見るからにやんちゃ少年なアイツが隣の席に派手な音を立てて座った。
「おはよー、A」
そう…アイツこと「柴田裕輔」は隣の席のチャラ男である。
「……もう、お昼休みも終わるけど？」
「え？相変わらずカッタイなぁー」
「…」
「無視！！」
げらげらと笑う彼の手が伸びてきて、グイっと顎を掴まれてバッチリ目が合った。
“キャー！？”と女子の悲鳴が聞こえて、離れなきゃいけないと咄嗟に後ろに引こうとしたのになぜか近寄る顔。
直射日光みたいな髪色が目に痛い。
…そんなキラキラを掻き消すような、黒い笑顔を浮かべたアイツ。
「そんなあからさまにイヤな顔されちゃ、
余計に火ぃつけるだけよ？」
“知っとるだら？”って溶けそうなくらい良い声で囁かれて。
耳にあたる吐息が擽ったくてびくっと肩を震わせると、満足気ににやーっと口角が上がった。
――先週の金曜日だった。
裏表のないただ女好きだと思っていた彼が、馬鹿を演じてるだけの頭が切れるヤツだと気付いたのは。
周りには聞こえない音量で、ドS発言をブチかますコイツを突き飛ばして皆に言ってやりたい…。
笑みを浮かべてるけど……目が笑ってないよこの男！！って。
……絶対ゲスいこと考えてるよ！！って。
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作者名：遊馬
| 作成日時：2020年10月15日 0時
