マカロニマカロン (ページ4)

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　動画上でよく見る眼鏡姿とは違って、コンタクトの彼。

　瞳を覆ってるはずの薄いレンズは透明で、直に見つめあってるみたいだった。

　どくどくと煩い心臓をぎゅっと掴むような…意地悪な笑みを一瞬浮かべて、彼が変わらぬ調子で話し出す。

「…顔合わせてんのに省略する意味ある？学生の隠語かや！」
「す、ストーリーとかで載せるんじゃない？」
「おぉい！？絶好のフリ何流しとるん」

　キレのいいツッコミと同時に冷たい缶ビールを頬にくっつけられて、“えぇ！？”って声は驚きで上ずった。

　いつもの調子に戻れてるのは彼だけで、心臓は暴れたままだ。

「ノるだらそこは！」
「何！JKとか？」

「PKだら」

　キラン、と調子よく下ネタに走る金澤。

　いつも通り笑い飛ばしてノってあげるはずが、脳裏に浮かんだ“一緒にいれるだけで、満足？”って疑問が胸を締め付ける。

　上手い言葉が出てこなくてきゅっと唇を噛むと、頭を小突かれた。

「……」
「無言になるのやめりん！」
「ごめ、」
「……なに、」

　私が口籠ったのをきっかけに、手首を掴まれて覗き込まれる。

　ゆらりと揺れた私の目を彼が見逃すなんてことはなかった。

「なに。僕が、嫌になった？」

　“え？”と零した声はテレビの音に掻き消された。

　顔を上げると真剣な表情でこっちを見ていてすぐに視線を逸らす。

　あまりにも、いつもとは違っていて。
　あまりにも、的外れなことを口にする彼に息が詰まる。

　嫌になる、なんてあり得ないやん。こんなに好きなのに。

「好きな男でも出来たか」
「え？」

「……分かりやす」

　一瞬の動揺に察しがついたのか手首を離されて。

　その隙に立ち上がろうとソファーから腰を上げるとぐんと手を引かれた。

「ねえ」
「わっ、！」

「そんな男やめて僕を好きになりなよ」

　後ろに手を引かれたことでバランスを崩して、彼の腕の中にぎゅうと収まる。

　上から信じられない言葉が降ってきて、時が止まった。

「……っ、」
「うわ、なんだ…分かりやす、」
「えっ？」
「僕のこと好きなんだったら早く言えっての」

　見たこともない至近距離でふっと笑って、頬を摘ままれる。

「A」

　近くて遠い苦くて甘いカンケイは、――ビールの泡と一緒に弾けて消えた。

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