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翌日、撮影はお休みらしくフレックスタイム制の私が出社するタイミングに合わせて一緒に家を出た金澤。
ひらひらと振る手は小さいのに、ちょっとだけ伸びた髭が男を感じさせる。
そんなつもりはないって分かってても、きゅんとしちゃって…慌てて視線を逸らした。
「またね」
なんて言葉に“うん”って可愛くない返事を返す。
いつになるか分からない約束にいとも簡単に踊らされて、彼と別れた瞬間にウキウキしながら出勤してしまう自分がアホみたいに素直で笑えた。
会社について、PCに届いていたメールを返信していた時。
……ふと浮かんだ疑問。
自分の家の方が広いはずだし心置きなく休めるはずなのに、なんで私のところに来るんだろ？
いつから何がきっかけでこんなに仲良くなったんだろ？
…金澤とは大学生くらいからの付き合いで、バイトのシフトが同じだった。
それだけなのに。
小中高大と、今の職種だって丸っきり違うのに。なんで？
私と友達でプラスになることが少しでもあって、私を選んでくれてるんだとしたらそんな喜ばしいことはない。
「……一緒にいれるだけで、満足なのかなぁ」
そんなこと到底思えないけど、呟いた言葉はやけにしっくり来て。
残酷に、私の心を抉った。
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「はい、カンパーイ」
久々に聞いたその言葉に固まっていたら、ガツっと私の指まで巻き込んで彼の缶がぶつかってきた。
デスクの上に置いていたスマホがパッとついて、“仕事終わったら連絡しりん”とメッセージが表示されたのが数時間前のこと。
集まることになったのがついさっきのことだ。
昨日の今日でまた私の部屋でくつろいでる金澤。
やっぱり関係はそう簡単に変わらない。
「いった！何珍しいやん」
「…なんとなぁく」
にま、と口角を上げて笑う彼は既に酔っ払ってるみたいにふわふわしてて心臓に悪い。
何も考えてないはずなのに、肩がぶつかりそうなくらい近くに座ってて。
……どきどきが加速する。
「そういえばさ、最近って乾杯のことKPって言うらしいよ」
「けーぴぃ？」
「頭文字じゃない？」
ふーん…と興味のなさそうな返事。
横顔をじーっと見詰めていたら、いきなりバチリと目が合った。
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作者名：遊馬
| 作成日時：2020年10月15日 0時
