マカロニマカロン (ページ2)

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ちかくてとおい *ms ページ2

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「おつかれー」
「おつかれ……手に持ってるの何？」
「うわ、めざとっ。りょうくんから貰った旅行のお土産」
「ありがとうございま～す」

　手のひらを上にして両手を出すと、渋い顔をして軽くぺちんと叩かれる。

　“何お礼言っとるん。つまむつもりで持ってきたけどさー”なんて笑いながら私に押し付けて、何事もなかったかのように靴を脱いで上がってく。

　いつの間にか、本当にナチュラルに。

　――彼は私のテリトリーに入っていた。

「お、分かっとるねえ」
「…ビールはアサヒだけ、ね」
「重たい十字架背負ってるんで」
「ハイハイ」

　気が付いたら、“お邪魔します”って声は“おつかれー”に変わった。

　グラスを用意しなくなって、勝手に冷蔵庫に手を伸ばして缶のまま飲むようになった。

　“乾杯”なんて言ってグラスを重ねあう行為もおざなりになって、テレビの音をBGMにお酒を飲むだけのカンケイ。…ただ、それだけ。

　暇になったら連絡があって、私の部屋に訪ねて来て、おつまみを食べながらお酒を飲む。

　何でもない会話は死ぬほどしたのに、大事な言葉は奥にしまい込んで言えなくて。
　そんな私の気持ちなんて気にもしないで何度か泊っていったこともあった。

　素直になれないから、変わらない関係。

　“好き”なんて言えないまま時間だけが流れてく。

「やっぱ、Aの隣が一番落ち着くわ」

「……なにそれ(笑)」
「そこは“わたしも”だら。」

　ウフ、って体をくねらせてふざける金澤に冷ややかな視線をおくる。

「え、裏声に鳥肌立ったんだけど？」
「まじでバカ失礼な女だな」
「うん？」
「すまん女なんて居らんかった」
「…」

　悪びれもなく肩を震わせながら笑って缶ビールを傾けて。

　ぐびっと良い音を立てて最後の一口を飲み干すと、ゆっくりソファーに沈んでく。

「帰んの面倒すぎぃ…」
「…」
「ココ借りていい？おやすみ」
「……おやすみ」

　面倒って言った時はテコでも動かない癖に。

　語尾にクエスチョンマークを付けておきながら、返事をさせる気なんて更々ない。……本当に狡い男だ。

　一夜の過ち、なんて、起こさない彼が憎い。

「馬鹿はどっちよ」

　空き缶を指で弾くとカランと転がるくらい当たり前に。

　彼が私を意識してないことだけ、確かだった。

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