015号室 ページ16
-
「なにやってる人なの」
どこに怒る要素が……?と理解しきれない間に吉留さんから新たな質問が送られてきてしまい、柄にもなく慌ててしまう。
「え、あ、……今の奴、ですよね」
「そう」
こんな廊下で立ち話、なんてシチュエーションも初めてだからか不思議なドキドキ感も合わさって。
「たしか、居酒屋を運営する会社の営業マン、やったかな」
「……何歳?」
「え、26……?たぶん」
兄貴は早生まれなのでちゃんと言えばまだ1個上になるのだろうけれど、まあそんな小さなことはこの際いい。
まずはこの絶妙な空気感をどうにかしたい……!
いや私がどうにかできるものでもないのか……?
なんて思っていると、
「……そんな奴ところ行くんだったら、俺んとこ来てよ」
「え?」
「俺のところの方が、いいよ。……絶対」
ほんの少し距離を縮めてきた吉留さんに、するりと突然右手を握られて。
あ、ちょっと熱いな、
なんて呑気に感想を心の中で述べてしまう。
熱くて、意外とゴツゴツと男らしくて、
ああ、この手でいつもあのベースを弾いてるのか、
なんて、これも呑気に。
「……情けないな。他人に触発されてやっと言うなんて」
そのまま、「夜ご飯、まだでしょ」なんて言われるがまま手を引かれて暗い夜道に連れていかれていく。
「吉留さん、でも、あの、私、お財布もなにも、」
「いいよ。俺がだすから」
__それよりも、今すぐ聞いてほしい話があるから。
そんな真っ直ぐで強かな瞳に言われたら、もうその腕を振り払うことも、もう無理やりにでも引き留めようだなんて、なにも、なにもかも、私にはできない。
あなたに出会ったあの初めての瞬間から私は、その目にだけは、とてつもなく弱いから。
-
107人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちわわ - 初めまして!もうめちゃくちゃ刺さりました…大好きすぎる作品です…!第2章のパスワードを教えていただいてもよろしいですか…? (2022年6月3日 2時) (レス) id: 8e9e78c35a (このIDを非表示/違反報告)
蓮 - 初めまして!とても素敵な作品ですね!続きが気になります!第2章のパスワードを教えていただけますか? (2021年3月26日 17時) (レス) id: ce4eaa6c55 (このIDを非表示/違反報告)
ヤマダマカロン(プロフ) - 第二章と片岡さんのお話のパスワードを教えてもらいたいです! (2020年10月10日 2時) (レス) id: 41c2841ae6 (このIDを非表示/違反報告)
Sn(プロフ) - はじめまして!素敵な作品で一気読みしちゃいました(TT)第2章も他の作品も是非読みたいです! (2020年3月6日 1時) (レス) id: 9a92e69ecf (このIDを非表示/違反報告)
巻 - 好きです、でした、、汗 (2020年2月14日 1時) (レス) id: bbe11dd873 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ヨムヨム | 作成日時:2019年9月11日 12時